魚が出てきた日のレビュー・感想・評価
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悪ふざけがすぎる
スペインで実際にあった水爆搭載機の事故から触発されたブラックコメディ、テーマがテーマだけに笑うに笑えない。
危機意識を持ったのであれば少なくとも軍事専門家の考証くらいはやって欲しかった、コメディ仕立てなら単なる思い付きで済むと思ったのだろうか。
単発機ではないのだからエンジン故障でも通信は可能なはず、民間の目撃情報頼りとは余程の突発事故か撃墜だろう。安全装置は付いていたようだが回収を前提とした非常投棄ルールなら位置発信機くらいつけておくのが常識だろう、パラシュート脱出するならエマージェンシーキット位の装備品は無いのだろうか、ブリーフ一枚でうろつくだけ、核爆弾を扱う軍人が単なる間抜けにしか見えないし特殊な薬品が偶然で手に入るものだろうか、いちいち設定に無理があり、結末ありきの時間稼ぎにしか思えない。
名作「島の女」をオマージュしたのか、ギリシャは発掘品の宝庫なのでお宝にはめっぽう弱いのは分かるが自虐ネタのようなお粗末な人物描写にも壁癖とする。
軍は馬鹿ながら努力はしましたが強欲なヤギ飼いのせいで最悪事態を招きましたとは責任転嫁の最たるもの、アメリカが製作費を出したのではないかと邪推したくなる。
面白く、やがてお怖ろしき核の恐怖
1966年に起こったパロマレス米軍機墜落事故を元に作られた政治的な風刺映画
コメディタッチでその事故が監督の国ギリシャでもし起こったならというお話です
パロマレス米軍機墜落事故は本物の水爆4発を積んだB-52が空中給油機と空中衝突して墜落した実際にあった背筋の凍る事故
水爆は3発が本作の冒頭で語られるパロマレス近郊の農地に落ち、1発は近くの海中に落ちた
幸い核爆発はしなかったものの、農地に落ちた3発のうち1発は無傷だったが、2発は猛烈な放射線を放ちかつ毒性をもつ核物質のプルトニウムが漏出した
米軍により除染、土壌の入替が行われたので、もう安全ということに公式にはなっています
海中に落ちた水爆は無傷で回収されましたが、現地は欧州各地から観光客のくる別荘地でもあり
スペインの観光大臣がビーチで泳いで見せて安全をアピールする羽目になりました
本作の水爆の小道具はこの事故で実際に海中から回収された本物の水爆の写真とそっくりに作られています
面白く、やがてお怖ろしき核の恐怖
ギリシャはエーゲ海のひなびた離島ののんびりした何もない風景、仕事もなくカフェでぼんやり過ごす島の男達がカメラに捉えられ、ナバロンの要塞やグランブルーで観たギリシャの貧しい田舎町の光景が展開されます
エキストラはロケをした島の本当の住民なのでしょう
ギリシャの田舎の風景と人々
つまり監督の愛する母国そのものを愛情を込めた視線でカメラが写しています
そしてにわかに世界中から観光客が押し寄せ、カラフルかつ情熱的な夜の広場でのダンスシーンと続きます
そして題名どおり、夜の暗い海に大量の魚が浮かぶシーンに続くのです
そして青白いチェレンコフ光とおぼしき光でラストシーンとなるのです
その時の恐ろしさは、監督が感じた我が故郷がこうなってはどうしようという恐怖を、私達観客が共有した恐怖なのです
本作から既に半世紀が過ぎました
核事故はそれからも起こっているでしょう
日本では原発事故も起こしました
しかし核爆発という 最悪の事態は免れています
しかし言い方を変えるなら、幸運を使い果たしつつあるともいえるのです
21世紀の東アジアでは核戦争の危険が高まっています
つまり核事故の確率も高まっているのです
魚が出てきた日は日本で現実に明日起こるかも知れないのです
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