エル・スールのレビュー・感想・評価
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これぞ映画!と叫びたくなる
「ミツバチのささやき」よりこっちのほうが好き。アナの圧倒的に美しいまなざしの数々ような奇跡的なショットはないかもしれないが、宗教画のように美しいショットは前作以上。
前作も素晴らしい自転車のショットがあったが、今作もある。エストレリャが自転車で手前から向こうまで自転車で移動し、戻ってきたら7年経っているショット。往路復路で俳優も代わっている。これぞ映画!と叫びたくなる。
予算の都合で予定の半分しか撮れなかったということで、尻切れトンボなのかと思いきやそんなことはなく、開かれた良いエンディング。もちろん、完全版が観たかったがそれは叶わぬ夢。
ミツバチのささやきの監督、かなりの寡作。 前作は解説を聞かないとた...
繊細なやりとりと美しい陰影
エリセ自身の追想の如き傑作
「ミツバチのささやき」から10年を経て1983年に発表されたビクトル・エリセ監督の長編第2作。
前作と違いスペイン🇪🇸の本格的な民主化が始まった時期に撮られただけに表現がストレートでわかりやすい。結果、内戦以降の歴史を俯瞰することとなった。
時は1957年、15歳の少女エストレリャの父アグスティンが失踪した。エストレリャは幼い頃からの父の記憶をたどった。
内戦で敗者となり投獄された左派の父は右派の祖父のもとを離れ南から北へ移住していた。
内戦後の状況がすっきりしたものの父の心情が語られることはない。南で愛した女性への思いもわかるが、それだけでは足りない。自分には到底理解できない父の焦燥を思った。
南を知らずに育ったエストレリャがひとり南へ向かう構図が凄いなぁ。激しくはげしく感動した。これが映画だ。
エル・スール、南へ、、、
そう、エストレリャはエリセだった。
ちなみに「父 パードレ・パドローネ」「アレクサンダー大王」のオメロ・アントヌッティと再会した。予期せぬ再会だったけど嬉しかった。
ソレジャナイ
2024年2月13日はビクトル・エリセ祭り。個人的に。
南が出てこない南の話
『ミツバチのささやき』がラストで希望の光が射す印象だったのに比べると、切なく、やりきれない気持ちになる映画でした。
愛する子どもには「親の顔」を見せなくてはいけないけれど、ひとりの人間としての葛藤や苦悩もあり、それを子どもに悟られないように暮らすのもまた愛情です。
しかし、子どもは成長して少しずつ親離れしていくので、幼い頃に求めた100%の父親でなくても良くなります。
15歳のエストレーリャは父親が思うより大人であり、8〜9歳からずっと気にかけていた真実を、大人同士として話してほしかったのではないでしょうか。
スペイン内戦後を描いた作品
エル・スール (字幕版) EL SUR
神戸市内にある映画館「シネ・リーブル神戸」にて鑑賞 2024年2月4日(日)
この作品はクラシック音楽が使用されてます。その解説をします。
エンリケ・グラナドス(1867年-1916年)はスペイン生まれの作曲家
使用されたのは以下
12のスペイン舞曲集Op.37 No.5 アンダルーサ
12のスペイン舞曲集Op.37 No.2 オリエンタル
アンダルーサは良く知られています。きっと一度は聴いたことがあるのではと。
ピアノソロで演奏され クラッシックギターで演奏されている。リズミカルでフラメンコダンスのように情熱的です。カッコイイ。
オリエンタル 物悲しい切ない感じの曲
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本編
エストレリャ(イシアル・ボリャン)が、父アグスティン(オメロ・アントヌッティ)がもう帰ってこないと予感したのは15歳の時。
1957年の秋の朝、枕の下に小さなまるい黒い箱を見つけた。は父が愛用していた霊力のふりこがのこされていた。
エストレリャが7歳か8歳の頃(ソンソレス・アラングーレン)、一家は“かもめの家”と呼ばれる郊外の一軒家に住むことになった。
父は、家の前の道を“国境”と呼び、バイクに乗せてくれる。そして、水脈を発見する奇跡を行なって村人に尊敬される父。
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母フリア(ロラ・カルドナ)は、かつて教師だったが、スペイン内戦後に教職を追われ、家にいて読み書きを教えてくれる。
冬の雪の日、南では雪は降らないと母に教えられ、エストレリャは南に想いをはせる。父は南の出身だが、祖父と大喧嘩をして北へ出た。
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5月になって南の人が訪れてきた。アグスティンの母ドナ・ロサリオ(ジェルメーヌ・モンテロ)と乳母ミラグロス(ラファエラ・アパリシオ)。
エストレリャの初聖体拝受式の日の朝乗って、エストレリャは父と共に、パソ・ドブレを踊った。南に帰ってゆく祖母とミラグロス。
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エストレリャは父がイレーネ・リオス(オーロール・クレマン)という女優を想っていたことを知る。
父は映画館でイレーネ主役の「日かげの花」に見入る。
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内戦の頃に別れたかつての恋人で、本名をラウラという。彼女を未だに思っているのか。
アグスティンはラウラに手紙を書く、しかし返事は辛辣なもの。
「8年前に別れて以来、未来に生きる決意をし、女優をやめて一年になるのに、なぜ今さら手紙を」「今でも夜の来るのが恐い」
アグスティンが最初の家出をしたのはそんな事があった直後だった。
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クランド・ホテルで食事に誘ってくれた時、それが最後になるとは思っていなかった。隣りのサロンでは、新婚を祝って、あの“エン・エル・ムンド”のメロディーが流れていた。
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ビクトル・エリセ監督 1940年スペイン生まれ
映画館から上映前に女の子の写真が入ったハガキ大のカードをいただきました。ここでは「エストレリャ」
ムーチャスグラシアス! 大岸弦
父の別の一面に気づき少女は成長するとの苦い記憶 父に対する後悔
父はなぜ
絵画のように美しい景色。
並木道を通り、蔦バラで覆われた門をくぐるとかもめの家。父は国境と言う。
エル•スールとは、スペイン🇪🇸語で"南"という意味だそう。
スペイン内戦で南に住んでいたエストレリャの父アグスティンは、その父と反目というより敵対して逃げるようにこの地に辿り着いた。病院に勤務する勤務医である。
また、振り子を使って色々予言する力も持つらしい。
母は、内戦の報復で教職を追われたと説明される。
エストレリャの初聖体拝受の際、南から祖母と父の乳母がお祝いに来てくれた。本当に花嫁のように白くて美しい姿だった。人前に出たがらない父も後ろで見ていてくれて、後、エストレリャと踊ってくれた。
父の部屋で何度も同じ女性名を書いた封書を見つけ新たな父を発見する。
偶然帰り道父の愛車バイクを映画館前で見つけ貼ってあったポスターに父が書いていた名前を見つける。受付でチラシをもらいその女性というか女優を確認する。父が出て来るのを待ち、カフェに入って行き手紙を書いているのを見て父に合図を送る。
父は娘に見られて一瞬動揺した。
その女優の作品を観ていた父、娘にはごまかす。
その女優からの返事。
なぜ今頃?4回出演したうち3回殺される役よ。
1年前に辞めた。セビリアに逃げている。もう手紙を書いて来ないで欲しい。 と。
父はどう思ったか。
母と赤い毛糸をくりながら🧶話をする。
写真館にはエストレリャの写真も飾ってある。
なぜか並木道の木に白いペンキが塗ってある。
時々、父は、帰って来ない日があった。
ある日、学校にいるエストレリャを呼び出し、グランドホテルで昼食をとろうと誘う。
一通り食事を終えた後、娘からあの手紙を書いた日のことを伝えられ、女性のことも尋ねられ動揺する父、洗面所で顔を洗う。
席に戻った父は、娘に
「学校をサボれないか?」と聞くが、
娘は学校に戻る。
父は、「思ったまま何でも言えることはいい」とも言っていた。
その晩も父は帰らず、‥‥
あの女性に長距離電話したらしいが。
永久に帰らず‥‥、持ち物皆家に置いていた。
娘は後悔し、
父が過ごしていた屋根裏部屋に行きベッド下に隠れる。見つけた母は心配ばかり。
しばらくして床に伏せるエストレリャ。
南に療養しに行くことになる。
美しく物静かな作風に浸れたが、「ミツバチのささやき」の完成度には…
「ミツバチのささやき」のレビューに対する
ある方のコメントに後押しされて、
今は無きシネ・ヴィヴァン六本木での
ロードショー以来、再鑑賞した。
10年に一作との寡作のエリセ監督だが、
日本では「ミツバチ…」と
「エル・スール」は同じ年に公開された。
この年、キネマ旬報の選定では
「アマデウス」が第1位、
「パリ・テキサス」が第6位、
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と
「ターミネーター」がベストテン外の中、
「ミツバチ…」が第4位、
「エル・スール」が第14位との選定だった。
夫の他の女性への想いに対する妻の心持ちは
如何ほどであったろうか。
スペイン内戦と夫婦関係を重層的に描いた
「ミツバチ…」に比べ、この作品では
その隠喩性は影を潜め物足りなさを感じた。
また、これまで
「スリー・ビルボード」等の
描かれない結末を観客に解釈を託す
幾つかの作品を観てきたが、
この映画では娘が父の電話の領収書を
カバンにしまう場面が描かれた。
彼女は、父を知るために父の愛した女性にも
会いに行くのだろうとの前提なのだろう。
解説によると娘が南を旅するシーンの
撮影予定はあったものの
最終的にエリセ監督は描かないことを
決断したとあったが、
さすがにそれを描かないで終わらせては
この作品のテーマ性を中途半端に
してしまったのではないだろうか。
「ミツバチ…」のあまりにも見事な
完成度に比べ、この作品は
国内の分断と個人間の分断とを
今一つ重層的に絡み合わせることが出来ず、
内容的には少し平板な出来に
終わってしまったように感じた。
しかし、
窓からの光の推移の映像が印象的だったり
美しく物静かな作風に浸れる
作品ではあった。
少女の目線と、大人達の秘めたる心
目黒シネマ 幼いまなざし特集2
『ミツバチのささやき』との二本立て
前情報なしで観たので、ミツバチのささやきと同じ、ビクトル・エリセ監督と後から知りました。10年に一度しか撮らない監督という事も。
振り子にL字ダウジング!
父親がホントに仕事で使ってたなんてワクワクします。
水脈を発見するのに、コインでのお手伝いも羨ましい。
父と娘の信頼関係が伺えます。
ちなみに、ドラえもんで、のび太くんがダウジングやってたのを思い出しました。
父と娘、父と母、母と娘の関係
内戦による父と祖父の関係。
父と思い女との関係。
ミツバチのささやきの時もそうですが、子供の目線、秘めたる大人たちの心。そんな機微が描写されてるのは、エルゼ監督自身の何かが投影されてるのでしょうか。
印象的なシーンもいろいろあるのに、自分自身がヘロヘロで、寝ても仕方ないくらいで見ていたので、なかなかしんどかったです。
あとは困ったことに、ずっと主演の女の子の口が半開きなのが気になってしまい…
不正咬合なのか、おそらく口呼吸。
駆け足の時の不安定な姿勢…
そういうことで集中できない職業病(泣)
ミツバチのささやきは大好きな作品ですし、レビューを拝見して、出直します。
内戦がもたらす影
30ウン年ぶりに見た。絵画のような画面の美しさに、当時と同じように再び感嘆した。まるでレンブラント、それともスペインだから、ゴヤだろうか。光と影の扱い方が、本当にうまい。窓の外が白み始めて、ようやくわかる部屋の様子。黒々とした物陰の中から現れる父。画作りは素晴らしい。
かもめは風向きを示すはずなのに、常に南を指す。振り子は何かを導いてくれるが、明らかな答えを出してくれはしない。内戦で傷つき、過去を語らず、屋根裏に籠る父は、隠者めいている。南へ行こうとしていた父の代わりに、エストレリャは南に向かう。彼女が何を見て何を感じるか、この先は作られなかったので、知ることはできない。
ヨーロッパの子ども服って、かわいいよなぁ。グレーのワンピースで、赤と青の刺繍がされてるの、すごく好き。白い服も素敵だった。あと、星の指輪がおしゃれ。8歳頃のエストレリャが、佐久間由衣に似てると思った。
娘の父へのまなざし
主人公の少女はお父さんが大好きだ
初聖体拝受の日を迎え儀式の後に
家族の前で父と躍る少女はとても嬉しそうで
幸せそうだった
私はこのシーンを観て泣いてしまった
ところが、あることをきっかけに
父への感情が変わっていく
場所も北の国だそうだが、なぜか物寂しい気配が
全体を取り巻く
少女の目を通して場面 場面を描くさまは
自分も主人公になった気分だ
しかし何故こうになってしまったのは
内戦と言う恐ろしい出来事だ
争いは幸せを踏みにじる
父娘のリアル
難しい
映像が綺麗。
南に置いてきた父の思い出をこれから「見に」行く。
そうして物語は終わる。
静かな空間を描いていて、何となく雰囲気が「ゴッドファーザー」に似ている。
映像ひとつひとつが絵画のようで美しい。
しかし内容が難しすぎて私には分からない。
父親の自殺の原因は娘に「南の恋人の存在」がバレたから?
色々解釈を読み、何度も見ればきっと見えてくるものがあるのかもしれない。
どこか秘密めいた父親に関する追想
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