劇場公開日 1963年11月26日

「ただの豪華な舞台演劇になっている」クレオパトラ(1963) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ただの豪華な舞台演劇になっている

2013年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

総合:60点
ストーリー:55
キャスト:75
演出:50
ビジュアル:85
音楽:70

 豪華絢爛な衣装とセットと、多数のエキストラを総動員した迫力のある映像などは見所である。たくさんの市民が集まっている場面や行進の場面は、実写によるものが持つ生の迫力がある。エリザベス・ティラーの存在感も高かった。

 でも壮大な歴史物語なのに、クレオパトラを中心とした人間関係の部分ばかりに大きな焦点が当たりすぎている。これだけ金をかけておきながら、たいして戦闘の場面が撮影されているわけでもなく、具体的な政治や統治が描写されるわけでもない。ひたすらクレオパトラとシーザー、アントニーとのからみ、あるいはその他の登場人物の科白の掛け合いが延々と描写されるだけ。例えばアレキサンドリアにいる敵の船を襲って火をつけたといっても、そうしたのだとシーザーによって宮殿の中で科白で語られるだけで、実際にそうされる場面は描写すらされない。歴史の流れも多くがひたすら宮殿の中でのクレオパトラをはじめとする人々の話として語られるだけに収まってしまっている。そのように劇中の殆どの場面は人々の説明的な話し合いだけで占められており、動画によって物語が動くことがあまりなく、これでは映画としては不満が残る。
 結局のところこれは映画というよりも、やたらと金を使った豪華なただの舞台演劇に近い。科白も自然な会話というよりもやたらともったいぶったもので、これもまた映画というより舞台のようだった。これだけ金をかけてこれだけ大きな話を取り上げて、なんでこんなにも室内だけで展開されるこじんまりとした話になったのだろうという印象が強く残った。結局、こんな出来事が起きたと説明的に科白で言われるだけでは動画としての動きが少なすぎるし、それは映画としては面白みに欠ける。

コメントする
Cape God