喝采

劇場公開日:

解説

「失われた少年」と同じくウィリアム・パールバーグが製作し、ジョージ・シートンが監督した1954年作品。ブロードウェイで上演されたクリフォード・オデッツ『ユーモレスク』の戯曲から監督者シートン自身が脚色した。撮影はジョン・F・ウォレン、音楽は「愛の泉」のヴィクター・ヤング。主演は「ブルー・スカイ(1946)」のビング・クロスビー。この作品でアカデミー主演女優賞を得た「トコリの橋」のグレイス・ケリー、「トコリの橋」のウィリアム・ホールデン、「拳銃無情」のアンソニー・ロス、ジャクリン・フォンテイン、エディ・ライダーらが助演する。

1954年製作/アメリカ
原題または英題:The Country Girl
配給:パラマウント映画会社
劇場公開日:1955年4月15日

ストーリー

ブロードウェイの若い演出家バーニー・ドッド(ウィリアム・ホールデン)は、今度上演する新作の主演者にフランク・エンジン(ビング・クロスビー)というミュージカル・スターを使いたいと思っていたが、プロデューサーのフィル・クックは不賛成だった。フランクは酒浸りで演技にも唄にも昔の面影がないというのである。しかしバーニーはクックを説き伏せてフランクのテストをした。結果はよかったが、自信のないフランクはバーニーの返事も聞かずに去った。バーニーは彼の行方を求めて家を探し当てた。フランクは契約に不満のようだったが、妻ジョージー(グレイス・ケリー)にすすめられて一応承諾した。稽古にかかってもフランクの態度は落ち着かず、自分がこうなったのはジョージーの責任だとバーニーに語った。1人息子ジミーが自動車にひかれてからジョージーは酒を飲みはじめ、何度も自殺を試みてフランクを困らせるというのだ。この話を聞いてバーニーはジョージーを憎むようになったが、何も知らぬジョージーにはこのバーニーの態度が理解出来なかった。ある朝フランクがヒゲをそっているとき、自分の古いレコードがかけられているのを聞いた。このレコードがヒットしたころ、フランクは当時5才のジミーを連れてレコード会社へ行き、ふとしたことからジミーは自動車にひかれたのだった。フランクは当時を思い出して憂欝になり芝居に出るのがいやになった。ジョージーにはげまされて行ったが、ボストンの初演は失敗だった。ジョージーは誤解するバーニーに責められ、ニューヨークへ帰れと言われた。堪忍袋の緒が切れたジョージーはニューヨークへ帰ることにしたが、フランクは男に会うために帰るのだろうと彼女を責め、町に出て泥酔し、留置場に入れられた。身柄引き取りに行ったバーニーは先に来ていたジョージーと話すうち、ジミーが死んで酒を飲みはじめ自殺しかけたのはフランクであることを知り、献身的なジョージーの態度に愛情さえおぼえるようになった。やっと目ざめたフランクはニューヨークの初日に素晴らしい演技を見せた。ジョージーは喜んだが、彼女に更生を誓うフランクを眺めるバーニーの心は何とはなく淋しかった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第27回 アカデミー賞(1955年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 ジョージ・シートン
男優賞 ビング・クロスビー
撮影賞(白黒) ジョン・F・ウォレン
美術賞(白黒)  
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映画レビュー

4.0グレース・ケリーさま

2023年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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4.0ある母娘の不幸

2023年1月11日
iPhoneアプリから投稿

金銭的事情により修道院から連れ戻された少女は、薄い舞台幕に黒い影となって揺蕩う半裸の母の姿に不安定な自分自身の未来を見る。芸者の苦悩を娘にまで伝播させるべきではないと考えた母は彼女に外の世界を見るように促すが、意地の悪い義父は娘をも売り物にしようと画策する。娘はニューヨークの薄汚い街を彷徨するうちに、心優しい海兵の青年と巡り合う。このときのカメラワークは巧みだ。娘の脚部だけを写したショットは男たちの下品な誘いを無意味で匿名的なノイズとして排除する。しかしふと端正な身なりの海兵が現れ、そこではじめてカメラは彼と彼女の表情を映し出す。恋に落ちる、という心理作用が単純なカメラワークだけで示された素晴らしいシーンだ。娘は海兵との結婚を決意し、母もそれを肯定する。ただ一人批判的だった義父も、最後には母が自らの手で追い払った。しかし一方で母は踊り子としての「賞味期限」を迎えようとしていた。すなわち食い扶持を失いかけていた。母への思慕を捨てきれない娘は海兵との結婚を破談にし、踊り子として舞台に立つことを決意する。しかし時既に遅し、母は二人の生活を邪魔すまいと毒杯を仰いだ後だった。とはいえ最後はハリウッド映画らしく、舞台で嫌々ながら踊りを踊る娘の前に旅立ったはずの海兵が舞い戻ってくるところで映画は幕を閉じる。「これからは3人で一緒に暮らそう」と娘の肩を抱く海兵の言葉が既に事切れた母のショットと虚しく重なり合う。結局のところ男に振り回され続けてきた、そしてこれからも振り回されることになるであろう不幸な母娘の物語だった。

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因果

4.0余韻を残す

2019年6月16日
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 子どもを自らの不注意で死なせてしまった過去のため、飲んだくれで落ちぶれてしまっていたフランク。プロデューサーは過去の俳優を起用するなんてと大反対。  なんとか短い契約期間で劇出演を承諾することになったが、妻ジョージー(ケリー)が衣装係や舞台裏にまで口を出すほど神経質になった。二人とも再生の道を模索している。地方公演初日もさんざんな批評で落ちこんでしまうが、酒場で酔っ払うと歌手とデュエットしてしまうほど。このシーンがなかなか素敵です。  後半の意外な展開。フランクの絶頂期の台詞のことや、まさかバーニーとジョージーがキスするなんてことも・・・NY公演では代役を使うかどうするかと葛藤があるのに。立ち直るのにはまわりの協力がどうしても必要だったフランクと、彼を立ち直させるために自分を殻に閉じ込めていたジョージー。突然の求婚に迷ってしまう・・・  ラストは余韻を残すいい終わり方。二人の行く先を凝視しないと間違えてしまいそうだ。

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kossy