「橋本監督にメガホンをとらせて、執事・影山役に大泉洋と松田龍平に演じさせればもっと面白い作品になったはず」映画 謎解きはディナーのあとで 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
橋本監督にメガホンをとらせて、執事・影山役に大泉洋と松田龍平に演じさせればもっと面白い作品になったはず
『相棒』ファンなら、この原作をテレビ朝日が製作したらもっと面白い推理ドラマを作るだろうという意見に賛同してくれるでしょう。
わざわざ右京さんにお出ましにならなくても、橋本監督にメガホンをとらせて、執事・影山役に大泉洋と松田龍平に演じさせれば、アクションの見せ場も増えるし、コミカルさも、わざと臭さが消えてもっと面白い作品に仕上がること請け合いです。えっそれでは、『謎解き』というよりも『探偵はBARにいる』になってしまうぞって、それでいいんです。やっばりね、フジテレビが逆立ちしても刑事ものでテレビ朝日に勝てないのは、両社で作る劇場版のクオリティの違いだけで充分説明できます。
ケレン味たっぷりのサスペンス作品でも、本作より『TRICK』とか『警部補 矢部謙三』のほうが面白いと思います。
本作で白けてしまうのは、主人公の新人刑事・麗子のリアルティのなさ。北川景子が演じるならもっときっちり、財閥令嬢の顔と、刑事としての顔をきっちり演じ分けられたはず。
それと事件が国立署管内で起きるならまだしも、シンガポール行きの豪華客船を舞台に容疑者3000名の中での謎解きが展開されるという管轄外での事件設定に無理がありすぎました。麗子の上司の風祭警部が豪華客船に積まれた宝生グループの秘宝の警護に当たるという任務も、所轄の刑事ではあり得ないことです。
まして、船内で殺人事件が起こっているのに、日本の警察は一切介入されず、客船は停船せず、麗子と風祭のたったふたりが警察と連絡を取らず独断で捜査するなんてナンセンスです。『相棒』だったら、客船に乗り込んだ刑事が早速、右京さんに連絡を入れて停船させ、右京さんの捜査を待つところでしょう。
まぁ、それでも怪盗の爆破脅迫で、3000名の乗客全てが人質になるという設定は、それなりの緊迫感をもたらしました。けれども、麗子が人質になってしまう中盤から、謎解きに向けての思わせぶりな伏線を連発してしまうのです。それがどれもわざとらしく、漫然とばらまいただけにしか見えないのです。こんなサスペンスドラマ企画だったら、テレビ朝日なら即却下ものでしょうね。
他にも、全般的にキャスティングで突っ込みたくなる配役多数です!
まず、原作の印象から、執事の影山は櫻井じゃないなぁ~と違和感を持ってる読者の方は多いのでは。
事件の真相なんてかなり強引で、ええっとなりました。真相をミスリードする怪盗の正体も、全然らしくないのです。宮沢りえのキャラが鼻について、なんてもったいないキャスティングなんでしょうか。ラストシーンで、やっと宮沢りえのいい味を引き出してくれているところが救いです。
もうひとりキャラが鼻につくのは、風祭です。あんな軽薄な人物を椎名桔平が演じるのはもっいないではありませんか。彼はアクションでもハードボイルドでもきっちりこなせる渋い役者なんです。あんな鼻持ちならない人物なら、こそ泥役で登場する竹中直人で充分でしょう。
早い話が、 櫻井を軸に嵐人気に頼った安直な作品。観客の多くは、映画を見に行くよりも嵐を見に行っている人が多いのではないでしょうか。
普段サスペンスをみていない人でも、カウチしながら何も考えずに楽しめる作品です。わざわざ映画館に足を運ばなくて、フジテレビでオンエアされるのを待つので充分でしょう。