「プレーで倍返し。」42 世界を変えた男 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
プレーで倍返し。
試写会にて鑑賞。
近代のメジャーリーグにおいて、初の黒人メジャーリーガーと
して名を馳せたJ・ロビンソンと、
当時の会長、B・リッキーが成し遂げた功績が描かれている。
米国の暗部といえる人種差別問題、それはスポーツ界にも
しっかりと浸透しており、当時、ニグロリーグで頭角を現した
彼にブランチが目を付けなければ、おそらくジャッキーが
メジャーで陽の目を見ることなど一生なかったんじゃないか。
素晴らしい救いの神ともいえるブランチの言う一言がすごい。
今や日本ではバカみたいに「倍返し」なんてのが流行ってるが、
相手にやり返すことで利を生むなんてことはまずあり得ない。
これを「やり返さない勇気」と断じて、彼に示したのがブランチ。
「やり返さないという勇気を持て」と頬を打ったブランチに対し、
「頬ならもう一つあります」と応え、差し出したいうジャッキー。
この話だけでも感涙モノだが、実体験はそんな生温いものでは
なかったはずだ。作品で描かれている黒人差別のあれこれは、
ジャッキーにとってもっとリアルで残酷なものだったに違いない。
よく耐えて、よく成績を残した、と彼を誉め称えるに十分な話。
監督もチームメイトもファンも、総てが逆風に思えた入団から、
本当に、少しずつ、少しずつ、彼は信頼を勝ち取っていく。
スポーツをするのに肌の色など関係ない、と当たり前のことを
真っ向から言えなかった時代が確かにあったことを実感する。
主人公、ジャッキーを演じるC・ボーズマンは活き活きと動き、
彼を支える会長、ブランチをH・フォードが朗々と演じている。
あのハリソン君も御歳71歳、今作では今まで見たことないような
恰幅の良い重厚な役を演じているのだが、これがまた巧い。
彼が今作を牽引しているといっていいくらい、役にハマっている。
そんな彼の人柄がジャッキーを支えたといっても過言ではない。
最初から最後まで正攻法で描かれた真っ直ぐな物語。
もっとプレーの場面が見たかったと思う反面、テーマを外さない
的確な構成と彼らが於かれた状況が詳しく描かれ、野球オンチの
私のような人間ですら、しっかり理解できるように作られている。
(観る人を選ばない友好的な作品。当時の映画館はどうだったかな)