「ダメ映画の顔をした秀作。」ひとつの歌 milouさんの映画レビュー(感想・評価)
ダメ映画の顔をした秀作。
遠慮がちなショット、深く精密に考えてない構成、踏み込まない言い切らないほわんと素敵なシーン。日本のダメなインディペンデント映画と多くの条件を共有しながら、これに関してはそれがさほど腹立たしくない。この監督は、本当に不思議な才能だと思う。
遠慮がちな作りは徹底していて、なにしろ登場人物は劇中ほとんど表情をしっかり見せず、後ろを向いたショットばかり並んでいる(ヒロインなんか開始1時間経つまで顔がよく見えない)。
下高井戸シネマの上映後Q&Aで「あのシーンやこのシーンが心地よい」と言った観客がいたけれど、うん、たしかに心地よい場面はいくつもあるのです。それはきちんと評価されるべき資質。
でもさ、この監督は、結局これまでの4作品ぜんぶこの調子なんですよね。そういうなんか素敵なCMみたいな映像ばかり撮っていて、少しは自分の外に出てみようとは思わないんだろうか。
ここまでふんわりぽよんな構造だと国外での注目は望み薄。日本にとどまってそういう溜息みたいなマイナー映画をほそぼそ作れればいいんだというのも、それはそれで一貫しているとは思うけども。
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