「戦争映画が持つ使命」永遠の0 harukitaさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争映画が持つ使命
あまりの高評価と盛り上がりに水を差すようなので鑑賞直後のレビューは控えた。
と言うのも私のこの映画に対する評価、感想は良いものではないからだ。なのでまだ観ていない方、そして本作を愛してしまった方は読まないでいただけるとありがたい。
戦争を題材にした映画は、それだけである種の責任が携わるように思う。
シリアスな作品であればあるほどその度合いも増すだろう。
作り手の思想や戦争映画に取り組む姿勢が画面を通して観る者に訴えかけてくるものだからだ。
この映画の見所、誉められるのはVFX。それだけだと思う。作り手が力を入れたのはそこなのではないだろうか。確かに零戦が飛んでいる様は違和感無く観れた。それは素晴らしい技術だと感心した。
原作は未読だが話としては良い話だと思う。しかしそれをカッコ良く見せることで(またはカッコ良く死ぬことで)「特攻隊」を美化していると感じた。
この最低最悪の作戦によって散っていった先人たちには敬意を表したい。
その先人たちがこの映画を観たらどう思うだろうか?自分達の無念さや戦争の不条理さを伝えていると言えるだろうか?
後世に戦争と言うものを伝えていくという点において本作ではダメだと思う。カッコ良いではダメなのだ。きっとカッコ悪いことがカッコ良くならなければいけない時代だったと思うからだ。
この映画は若者向けの商業映画だ。
だからなおさらたちが悪い戦争映画になってしまっている。
それが本作を観た私の感想である。
「海ゆかば」という記録映画がある。アメリカのジョン・フォードという監督が撮影したフィルムを日本が編集したものだが、その中に空母に突っ込む特攻隊の映像がある。アメリカ側の目線で撮られたその短い映像にはセリフなど勿論無いが、特攻という作戦のクレイジーさは痛いほど伝わってくる…。