きいろいゾウ インタビュー: 宮崎あおい&向井理「きいろいゾウ」へ注ぐ惜しみない愛

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きいろいゾウ

劇場公開日 2013年2月2日
2013年2月1日更新
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宮崎あおい&向井理「きいろいゾウ」へ注ぐ惜しみない愛

「何も知らない2人が急に結婚して、一緒に生活して、お互いを見始める──という基本のところが原作にひかれた一番の理由だった」。これは、心を揺さぶる映画を撮り続けてきた廣木隆一監督の最新作「きいろいゾウ」を撮るにあたっての言葉だ。そして、同じく原作の世界観にほれ込み、主演として作品に命を吹き込んだ宮崎あおい向井理。この監督、このキャスト、そしてロングセラーを記録する西加奈子の同名小説が原作──三拍子そろった今作が魅力的でないわけがない。初共演ながらも、出会うべくして出会った夫婦ツマとムコとしてスクリーンで生きた2人。彼らがほれた「きいろいゾウ」の世界には、愛と痛みと優しさが詰まっていた。(取材・文/新谷里映、写真/片村文人)

出会ってすぐに何かを感じ、満月の夜、「結婚してください」という突然のムコの言葉に「はい」と返事をするツマ。お互いを知らないまま一緒に暮らし始めた2人の生活は、なんとも穏やかで幸せだった。しかし、互いの秘密が明らかになることで変化が訪れる。普通ではない始まり方のツマとムコの関係を、向井は「むずがゆかった」と言い、宮崎も「そこに共感はなかった」と意外な言葉を口にするが、どこかファンタジックな世界をリアルなものとして成立させているのが、この映画の面白さだ。ファンタジックとリアルのバランスをコントロールしたのは、もちろん廣木監督。宮崎は監督が作り出す、自由に演技できる場に感謝する。

「とてもシャイで口数は少ない監督ですが、役者が気持ちいい現場を作ってくださるんです。役者の目線上に人がいたら、必ず『そこは空けておいて』と気を配ってくれたり。そういうちょっとしたことで(役者の)気持ちは変わったりするものなんですよね。何も言わずに演出をするというのも私は好きでした。ここがダメとは言わず、ただ『もう1回』と言うだけ。何が違ったんだろう……と、自分のなかで考えることで一歩先へ連れていってもらえるというか。たとえば、わーっとテンションのあがったシーンがあって、あがったところでカットをかけてそのまま本番の撮影をしてくれたことがあって。その時、今まで味わったことのない感情が生まれたんですよね」。そのシーンは、ムコがある理由で家を空けている最中に、彼の机のなかにある過去の秘密を向き合う場面。カットがかかっても宮崎の涙はあふれたままで「大事なものがなくなるってこんなにつらいんだ、と思ったシーンでした」とせつない表情を浮かべる。

俳優自身も驚く演技を引き出した廣木監督に、向井も最敬礼だ。「(緻密に)計算して撮るというよりも、現場で出てきたものをどう撮るかという監督だと思います。自由にやっていいよという空気を作ってくれて、自由に演じさせてくれる。そのぶん責任感も増すけれど、プレッシャーに感じさせないのが廣木さんらしさなんです。雰囲気は人と人との距離や1人ひとりの性格を見ていないとできないことなので、自由にやらせているようで、実はものすごく見られているんですよね」。その言葉からはどれだけ廣木組の現場が居心地よかったのかが伝わってくる。

今回はファンタジーでメルヘンチックな世界に挑戦している廣木監督だが、「軽蔑」や「ヴァイブレータ」などで描いてきた暴力的な描写、深い愛ゆえの暴力がこの映画にも存在する。それは、水道の蛇口を止めようとするムコとそれに抗するツマのシーンだ。「あのシーンをあれだけじっとり撮ることはなかなか勇気がいると思うんですよね」という向井の言葉に、宮崎もうなずき、そしてツマの心情を代弁する。

「ムコさんが自分のことを分かってくれないというもどかしい気持ちゆえの行動で、ツマさんのいろいろな感情が渦巻いていたんですが、だんだんと無になっていくんです。痛いとか恐いとか、悲しいのか怒っているのか、何もかも分からなくなって、ああ、こうやって人は壊れていくんだなと思いました」。ツマとムコのそのせつなさは、観客の心にじっとりと張り付くだろう。

人は、いい映画を見たとき「明日から頑張ろう」「今度はこうしてみよう」と前向きな気持ちになれるものだ。「きいろいゾウ」はどうだろう? 傷を抱えたツマとムコ、次第に不調和音が鳴る夫婦──前半が幸せ過ぎるからこそ後半の痛みは想像以上に大きくなるが、傷ついて、お互いを知って、敬うことで、幸せが見えてくる。宮崎は語る。

「思うのは、自分が大事だと思う人と真っ直ぐに素直に向い合うことが大切なんだなと。ツマを演じていて後半はすごくしんどくて、私自身もしんどくて、向き合うことは大変だし見たくない部分も見なくてはならないけど、それでも一緒にいたいと思える人に出会えることは幸せなこと。そういう人に出会えたときに真っ直ぐにぶつかっていく強さを持ちたいと思ったんです」

一方、ムコを通じて向井が手にしたのは、見守ることの大切さ、向き合うことの大切さ。「ムコさんの場合は、後ろめたさのような罪悪感があったので、それを精算するために彼は田舎から東京に向かうんです。逃げているように見えるかもしれないけれど、向き合うために行動したこと。向き合うって大変なんだなと、向き合うことの大切さを実感しました。この映画には、ツマとムコを含めて3組の夫婦が出てくるんですが、夫婦の形はいろいろあって、それぞれが紆余曲折あっての夫婦なんですよね。個人的には(ツマとムコの隣に住んでいる)アレチさんとセイカさんみたいな夫婦にあこがれます」。その言葉は「映画のなかのツマとムコもそんな夫婦として生きていきたい」と、ムコの立場で言っているようにも受け止められる。と同時に、それは役への愛の深さであることを知る。そんなふうに宮崎と向井がいまも注ぎ続けている「きいろいゾウ」への愛は、きっとスクリーンからも感じるはずだ。

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