「あまりうまく行っていません」コズモポリス LRさんの映画レビュー(感想・評価)
あまりうまく行っていません
原作のドン・デリーロとはどういうスタンスの作家で「コズモポリス」がその文脈の中でどこに位置をしめるかを理解しないとこの作品の意味をとるのは難しいと感じます。
この作品の限定空間の中でおびただしく発せられる外言と内言、情報と解釈など様々な種類の言葉が飛び交いながら一点に向かって収斂していく構造は、ストーリーを追う作品ではなくどちらかというと長い詩や、たまたま言葉だけで表現された現代アートの1つといってもいいかもしれません。
例えば他の作品でデリーロが廃棄された爆撃機に対してどういう意味を与えているか、アートに対してどういう暗喩があるかを知っていないと原作を読んだとしても意味はつかめないですし、特にこの作品は言葉を極限まで切り詰めた対照的な作品「ボディーアーティスト」や統合的な長編「アンダーワールド」など他作品に手がかりを求めなくてはならない要素も多いように思います。
とはいっても観客はデリーロを知る義務は無いわけですから当然ストーリーを追うと思います。クローネンバーグのファンもパティンソンのファンだってそうだと思います。でも所謂「物語」としてはそんなに面白いものではりません。もしこの作品を映画化するのであれば映像作家ならではの映像に置き換えて真逆の表現をしたアートフィルムとして完成させるなどのアプローチが必要だったかもしれません。
僕はドン・デリーロのファンだしクローネンバーグの作品も大好きだけどこの作品はどっちの作品としてもあまり上手くいっているとは思えません。
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