「馴染めるか、暮らせるか。」マリーゴールド・ホテルで会いましょう ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
馴染めるか、暮らせるか。
もしもあなたがこの状況に於かれたら、どうしますか?
と聞いてくるような作品だった。
其々の理由で老人たちが長期滞在を見込み訪れたインドのホテル。
ネットではゴージャスな宣伝文句(こういうのを信じちゃダメだって)に
すっかり騙されて、到着してみたらボロホテル、けれど将来的には
宣伝通りのホテルになるから!と息まく、まるで詐欺師の青年支配人。
エ~っ!?マジ~っ!?っていう感じのご婦人がお1人いるが、
彼女は徹頭徹尾、インドに馴染まない。最後まで馴染まない。夫にも。
ふと、ここで思った。
夫婦で歳をとり、さぁこれからと、どこかに移住を決める熟年夫婦が
必ずいるが、お互いの価値観(環境面も)をよ~く確認しておくべきだ。
二人ともどこでも生きてゆけるタイプならいいが、そうもいかない。
田舎暮らしが好きな人もいれば、都会暮らしじゃないとダメな人もいる。
そういうギャップが露わとなって、更にサバイバル力も試されるという
かなり過酷で、面白い作品になっていた。
果たしてイギリス人がインドに住めるのか!?という感じで。
それにしてもあんなにインドを侮蔑するような表現でいいのか?と
思うシーンが多々あった。そこへ切り返すようにインド人は頭がいい。
とやり込めるシーンもあったが、どう見ても上から目線の描き方。
そこを堂々と渡り歩くのが青年支配人と未亡人の主人公。古い新しい
という絶対的価値観を覆そうという行いが清々しくてかなり新鮮だ。
郷に入ったら郷に従え。こういう人がいちばん強いな、と教えられる。
ゲイだったり、病を抱えていたり、金策のためだったり、色欲だったり、
バラエティ豊かに取り揃えた名優たちは其々に素晴らしく、
もちろんJ・デンチ様には頭が上がらないが、捻くれ者か?と思わせた
M・スミス演じる老女が私的に一番印象に残った。何かが劇的に変わる
訳ではないが、明るい未来を想像させる期待感がサラサラと流れ出す。
無茶な言動も行いも、若いからできる時と、年配だから通じる時がある。
青年の母が過去を回想し、自身の無謀な選択は果たして間違っていたか?
と問いただされるシーンもいい。やはり血は争えないのだよ~と笑った。
(悩んでいるならまず行動してみた方が。それでもう悩まずに済むんだから)