「ストーリーよりも人物像を愉しむ」マリーゴールド・ホテルで会いましょう マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーよりも人物像を愉しむ
空港ロビーのベンチに、ジュディ・デンチやビル・ナイをはじめとしたベテラン俳優7人が横並びになるところは壮観というより、むしろ笑えるカットというところがこの映画の楽しさだ。
それぞれが問題を抱えていて、これからの老後について真剣に考えてはいるのだが、明日をも知れぬ老人とはかけ離れていて切羽詰まった様子は7人の顔ぶれからは窺えない。皆、ポジティブで前向きなのだ。ここまでの人生ご破算にしてでも、新たな一歩を踏み出すことに躊躇がない。
ここは一般的に言われる老後の生活を問題にしているわけではなく、一度きりしかない人生、このままでいいのかという問いかけと、まだまだやり直せるというエールが込められている。
ましてや若者が希望を持たないでどうする、と引き合いに出されたのがマリーゴールド・ホテルの建て直しに夢を懸ける青年ソニーとその恋人スナイナだ。
インドでの生活に溶けこむことに最後まで拒否反応を示したダグラスの妻ジーンが一見マイナス指向に見えるが、彼女も最後は前に進むことを選んだ結果の行動で決して不幸せなことではない。
人種差別家のミュリエルの変わり様が既定路線とはいえ、そのしたたかさが中々に笑えて憎めない。さすがマギー・スミス。
ストーリーはありきたりだが、それぞれ人生の転機を望む人物像が愉しめる作品だ。そしてインド特有の色彩を楽しむ作品でもある。美しく力強い色彩が再現されなかったら魅力半減になる。日比谷シャンテでのデジタル上映による色彩は実に鮮やかで心躍る。
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