「惠子さん、緑子さん、助けて。」俺俺 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
惠子さん、緑子さん、助けて。
今や「オレオレ」ときたら、詐欺だ!としか思えないけど、
(今度は「母さん助けて」になったんだっけ?)
これだけ大騒ぎされていても、未だに騙される高齢者の
ことを考えれば、こんな詐欺を続けるバカ野郎は、
どんどん増殖して、今作のように苦しんでしまえ!と思う。
あれだけ他人を騙していれば、その「オレ」は何人何役も
いるわけだから、それが実際に存在すればこうなるんだと
いう、シュールを超えてかなりのサスペンスになっていた。
原作はまったく知らないんだけど、
こんな不条理を描くにはもってこいの人材、三木聡監督。と
いうわけで、私的にはとても面白かった。
笑っていられない状況に追い込まれる後半の衝撃度以外は、
全体的にはダラダラと主人公たち^^;の俺山談義が続いて、
ナオのいう、
「いや~俺の純度、高いっすね~♪」には笑ってしまった。
お酒でいえばストレートの俺、サワーの俺、水割りの俺、
濃いなり薄いなりはあっても、全部俺なんだもんね~(恐怖)
私的に自分はひとりでいいと思う派なので(普通そうだよね)
これは亀梨が演じているから楽しめるのであって、
自分だったらたまったもんじゃない!さらに一番怖いのは、
周囲から見て、どれが本当の自分か分かってもらえなくなる
という恐怖、コピーの自分が本物だ!なんていわれた日にゃ、
私はどうやって生き延びればいいんだろう…とまで考える。
まるで中学生円山みたく、妄想が広がっちゃうじゃないか!!
そんな恐ろしい世界を初めはいい方向へともっていき、
のちに地獄へと突き落としかけて、巧い具合に纏めている。
33人もの俺(実際は34人いるの?)を演じ分けた亀梨の熱演も
さることながら、特に主要の三人、それぞれがキャラクターを
もち、まったく違う存在感を醸しているところがいい。
実際には均の濃度が強いはずなのに、大樹に操られ、ナオに
感化され、自分が自分でなくなっていくような、均の焦燥感。
好きな自分と嫌いな自分、強い自分と弱い自分、を客観的に
見ることで、自分ってのは、こんな人間か~が分かると同時に
それが本来の自分を乗っ取ろうと迫ってきたらどうすればいい!
いや~怖い。やっぱりこのドラマ怖すぎる。
さて大樹の母役の高橋惠子、見事にハマっていて面白いです。
黒毛和牛のCMより面白い!
キムラ緑子の飄々とした演技は言うまでもなく。
その他、脇が豪華に三木常連組も含めて、笑わせてくれます。
あ!っていう登場場面くらいの人もいるんでお見逃しなく。
エンドでは、ほとんどの字面を亀梨が埋めてきますので(33人分)
また改めてそんなにいたのか!と思い返すことができる。
観た後、いろいろ語りたくなる不条理サスペンスになってますが
これが詐欺撲滅のキャンペーン作品になれば素晴らしいですね。
そうそう、劇中で母親を名前で呼ばせるという技は、
ちょっと気持ち悪いけど「母さん助けて」詐欺には大変有効です。
その家でしか通用しない呼び名でいきましょうね、これからは!
(俺も私もひとりでいいんです。純度が高まるでしょ、その方が♪)