劇場公開日 2013年4月20日

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「タイトルなし」ペタル ダンス きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0タイトルなし

2024年6月4日
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宮﨑あおい
忽那汐里
安藤サクラ

この三人が、自殺未遂をして入院している友だち=吹石一恵に会いに行くはなし。

台本も無しに、監督はこの四人に即興で好きに演じさせたのだという。
狭い車の中で、そして海岸で。
彼女たちは《死のうとした友だちに今から会うのだ》という、とてつもなく重たい緊張を負っている。

筋書きがシリアスである上に、決められた台本も、与えられた台詞も無いものだから、同世代の実力派女優たちの実験的共演への緊張が、さらにそこに上乗せされているのだろう。皆の硬い表情からそれが伝わる。

若い娘たちの心が、
風に押しつぶされて折れて曲がりそうな 生き様の木になり、
飲み込まれて藻屑になりそうな死に様の 荒磯の波になる。

オファーに応えたプロの役者であることと、プロットに没入する主体が生身の自分自身であることとがひとつになっているから、
なにか、画面がドキュメンタリーのようにも見えてくるのだ。
この企画でなければ、まず顔を合わせることなどなかったろう演者四人の素性を、僕は生身で見せてもらった気がする。

全員が凄い。
全員がバラバラだけど、それぞれの理由で死に損なった友だちに会いに行こうとしている。

監督は、期待以上のものが撮れて身震いしたのではないかと思う。

・ ・

地元を離れているので同窓会的なものには縁がなかった僕なのだが、この秋、45年ぶりに親友に会う計画を立てている。
死ぬまえに会っておきたいと、お互いに想っていたことが判明したからだ。
風と涛と、命と死を経て、勇気を出して旧知と相まみえる計画だ。
どのような言葉や表情が、この自分から湧き出すのか分からない。
人生は劇場だ。

きりん