「新機軸は分かるが・・・」キャビン tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
新機軸は分かるが・・・
冒頭では「能天気な若者がレジャーに出かけた先で次々殺されるスプラッター」かと思ったが、さすがにそんな単純なものではなかった。
周到な準備で選ばれた5人の若者がある場所に誘導され、仕組まれたものではあるが自ら選択した結果での怪物に襲われて、次々に死んでいく。それをカメラで逐一モニターし、その血を採取(誘導)する地下施設の所員たち。その目的はルール通りに殺された若者の血を捧げることで、古き神々の眠りを継続させること。
そしてそのルールとは①自らが選択した怪物に殺されること②殺される順番は各人に与えられた役割に従うこと③「処女」は生き残ってもいいが、殺される時は必ず最後になること。
所員たちは「どの怪物を選択するか」で賭けをしたり、覗きのようにモニター画面を観たりしながら、このルールに従って計画を遂行する。しかし物語の根幹を為すはずのこのルールが、途中から実にいい加減になってしまって興醒めしてしまう。
ジュールスとホールデンは無事(?)怪物(ゾンビ一家)に殺されるが、カートは儀式の場所を隔離するバリヤーに衝突して死んでしまい、マーティとディナは拳銃で射殺されるところだった。こんな風に真相を知った本人たちを強制的に人間の手で殺してもいいなら、「人類全体の平和と安全のため」と若者たちを勝手に連行(拉致)して、片端から打ち殺せばそれで済むのではないのか。
その他にもおかしいところは色々あって、マーティが大けが(どう見ても致命傷)を負ったはずなのに、なぜ何事もなかったかのように動き回れるのか全く理解不能。また最後非常ボタンで怪物たちが解放されて地下指令所は惨劇の舞台となるのだが、なぜこんな非常ボタンが設置されているのか全く分からない。フェイルセーフの考えから言えば、ここで怪物たちを解放すれば所内の人間は元より、外部へも被害が拡大するのは目に見えているので、怪物たちを封じ込める(外に出さない)方に設定しておくのが当然だ。怪物たちと所員たちの惨劇を見せたいのだろうが、それならもっと納得のいく展開にして欲しい。
製作者は新機軸を打ち出したことに自己満足で酔いしれ、折角の設定を生かし切れていないことを反省すべきだ。