思秋期のレビュー・感想・評価
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人生の折り返し地点を迎えた男女の破滅と希望を描き、サンダンス映画祭...
人生の折り返し地点を迎えた男女の破滅と希望を描き、サンダンス映画祭や英国アカデミー賞で高い評価を受けた人間ドラマ。
大人の鑑賞に耐えられる…という表現にぴったりの映画
こんな映画、日本で作れるもんやったら作ってみい!絶対無理! …と思った。悔しいけど。 どもこまでも自然。本当にそこで起こっているかのように、人生のある瞬間をみているような気がずっとしている。 さびしい魂達が寄り添うように求めるようにそこに在る。 大人の真実がそこに在る。 もう子供や若い奴等が好んで観るような映画は観るのをやめようと思った。
戦慄の 98分!!!!
何と powerful な映画であろうか!!!!
戦慄の98分!!!!
これだから映画は止められない!!!! 観賞からもう3日が過ぎ去ったと云うのに未だ思い返して身震いする自分がいる……!!
こんなにも じっくりと人の苦悩に まみれた表情を観続けた事が、かつて あっただろうか。
“傷付ける男と癒す女”と云う構図──。
怒りを抑えられない中年男と人知れず耐える女。どちらも、救済の術を教わった事が無い。傍にあるのは諦めと後悔を消費し続ける日常と酒。若さも希望も疾うの昔に置いてきた筈だのに、鬱陶しい程に逞しい。そんな姿に思わず ぐっと来る。見てられない様な有り体から目が離せなくなる。深く深く深く感情が入り込んで行く。そして突然、足元を掬われる。そうなると たちまち逃げ場は無くなる。身震いの日々が続く事となる。。。
怒男 Peter Mullan 恐るべし!!!!
癒女 Olivia Colman 恐るべし!!!!
そして脚本・監督 Paddy Concidine 恐るべし!!!!!!
遣る瀬無さだけでは語れない。
これは怪物だ……!!!!!!
仄暗い袋小路のどん詰まり
社会の仄暗い袋小路に吹き溜まった魂の、痛みも安らぎも冷静で慈愛に満ちた眼差しで見つめています。
苦さもあるけどほんのり温かい余韻がいい、音楽もいい。出会えて良かったです。
俳優としても活躍するパディ・コンシダインの長編初監督作品です。
抑えがたい怒りを抱えもがく男ジョセフと、彼に手を差しのべてくれた女性ハンナの話。
怒りと暴力と死で始まる冒頭は衝撃的でした。
ピーター・ミュラン、エディ・マーサンの名演もさることながら、コメディエンヌで知られるオリビア・コールマンが素晴らしく、見入ってしまいました。
ザンバラ髪が印象的な飲み友達役のネッド・デネヒーも良かったです。陽気な笑顔が、袋小路のどん詰まりからわずかに見える青空みたいでした。
年を重ねたらまた観たい作品。
予告を観て自分好みの作品だと思っていたけど、やっぱり良かった。
人生に迷った大人達の愛情と葛藤を泥臭く描いていた。
考えれば考える程、心に響いてくる。だけど、この気持ちを上手く表現出来ない。
主役の2人の演技は勿論良かったけど、ハンナの夫役の演技は素晴らしかった。
この作品は人生経験で見方が変わりそう。
年を重ねたらまた観たい。
苦しみを乗り越えて
「イン・アメリカ」の冴えない父親役だったパディ・コンシダインの初監督作。それも非常に優れた初監督作だ。もしかすると本年度ナンバー・ワンかもしれない。
ジョセフは画面に映った時から苛ついている。彼の内部で煮えくりかえった何かがたぎっているのが、手に取るように分かる。その彼が愛犬のあばらを蹴って殺してしまう、というシーンから映画は始まる。何とも陰鬱な始まり方だ。
ミュランはジョセフの複雑な心情を、しかめっ面を少しずつ変化させて巧みに演じた。どのシーンでもほとんど怒っているが、その後彼が見せる哀しみには心を突き動かされる。そしてその彼の再生を願わずにはいられない。
この後ジョセフはハンナと出会うのだが、前半はしばらく「いかにも」な展開だけが待っている。ハンナは夫からたびたび暴力を受けており、それを知ったジョセフは次第に心を開いていく。独立系の小作品にありがちな「救いの物語」だと思うだろう。だが「思秋期」はここから本領発揮する。その一つはジョセフの友人の葬式のシーンだ。”葬式”がこの映画でもっとも幸せに満ちあふれたシーンなのだ。悲しみながらも誰もが歌い、踊り、そして笑う。心が傷ついたジョセフも、アザだらけのハンナも本当に幸せそうだ。
だがこの後明かされる真実が息を呑むほど衝撃的だ。この映画が他とは一線を画す最大の理由だろう。抑圧されたハンナの心の闇の深さに驚かされる。それでいて「自分でも同じ事をするだろう」という共感を呼ぶのだから、なおさらだ。それもハンナ役のコールマンの緩急つけた演技のおかげだろう。物静かで信心深い彼女が豹変したとき、それはあまりにリアルで見ている方も苦しくなる。エディ・マーサンが演じた夫の気味悪さは人の嫌悪感を煽り、DVという行動の陰惨さを浮き彫りにする。こんなに恐ろしく痛々しい関係はなかなか描けない。
そう。この映画の登場人物たちは誰も彼もが変なのに、とても自然で観客の共感を呼ぶ。ジョセフが劇中で言う言葉にこういう物がある。「行動を起こすか起こさないかが、自分とハンナ側と世間側の違いだ」と。誰もが程度の大小はあれど、怒りを抱えそれを発散したがっている。ジョセフとハンナはその象徴であり、私たちの代わりに”行動”に移した。それは非常に大きな代償を伴う行動ではあるが、ある意味で救いでもある。だがいつまでも同じでは、結局救われない。自己嫌悪に陥り、また繰り返すだけだ。
究極の事態に直面したとき、彼らがどう動くのかは自分の目で見て欲しい。とても静かでおだやかだが、真の感動を呼び起こしてくれる。人間が持つ様々な感情を、一つの映画にどうやって押し込めたのか。まったく隙のない素晴らしい映画である。
(2012年11月17日鑑賞)
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