「ストーリーはクソだけど風刺など楽しめる要素も」アイアン・スカイ yum1さんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーはクソだけど風刺など楽しめる要素も
とにかくストーリーはクソ。
ナチスが月の裏側に生き残っている設定、世界観がとてもぶっ飛んでるのは良かった。
・ストーリーの評価できるところ
月面ナチスで育ったヒロインが、地球でチャップリンの「総統閣下」フルバージョンを見て、ナチスが如何なる歪んだ独裁政権かを理解し、いかにもアメリカンな黒人と共に、月面ナチスにある超巨大地球破壊兵器をストップさせる。まあご都合主義なところ満載ではある。
ナチスの戦力が全滅し、今度は地球軍の間で月面ナチスの保有するエネルギー資源の争奪戦が始まった。黒人はそれを見たからか、地球へ帰らなかった。基地を攻撃されて生き残ったナチスの前で、ヒロインとキスする。「黒人となんて汚らわしい」みたいな言い方をするナチスおばさん。「これから教育が必要ね」と黒人主人公に言うヒロイン。
「地球へ戻ってもエネルギー争奪戦でバカバカしい。そういうのと無縁な場所で普通の生活をしよう。」というある種制作者の願望みたいなものが伺える。この終わり方は評価できると思う。
・風刺
世界観だけではなく、評価したいのは世界各国の風刺表現である。
何者かが地球に攻めて来たため開かれた国際会議で、北朝鮮からアメリカまで、それぞれの国の発言が興味深い。
北朝鮮が「このUFO攻撃は我々によるものである」と言ったら、他の国々が笑い飛ばしたり、各国の戦争観、エネルギー資源への貪欲さ、兵器開発の隠蔽などなど面白おかしく揶揄している。
特にアメリカ大統領を単純バカで汚い言葉をバンバン使うキャラにしていたのがとても新鮮だった。核をあっさり使ってしまうアメリカ像は健在。
世界各国が結束してナチスを滅ぼしにかかった後、ナチスの保有するエネルギー資源の取り合いになり、各国の宇宙船が攻撃し合うところも叱り。
日本の宇宙船が特攻してる所とか、クスッとしてしまった。
資源の取り合いが始まると国際会議の部屋で乱闘が始まったのもかなり笑える。
で、音楽が切ないものになって、今度はこの悲しいエネルギー資源争奪戦、笑えないだろってなる。
エンディングでは地球のあらゆる場所に核が落ちて行く映像が流れ、どうやら地球はバッドエンドのよう。
「こんな風になってはダメだよ、マジ笑えないから」みたいな強いメッセージがあるような気がする。
・下ネタ多し
全体的に、アメリカ大統領とその選挙担当をはじめ下ネタ言う奴が多いけど、そのバカらしさに隠れる「笑えない部分」を読み取れば楽しめると思う。
・音楽
全体的に迫力あるハリウッドサウンド。
低音を強調していたり管楽器強めだったり。あとは空間を感じられるピアノとパッドサウンドを併用してる系も。
たまに古い歌モノが入り、破壊とか争いとかに、すごくマッチしていた。
どれも宇宙というスケールにピッタリの音楽だった。