「どんな状況にも真剣に前向きに生きることの強さ」大統領の料理人 もしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
どんな状況にも真剣に前向きに生きることの強さ
よかったです、そしてこれが実話がベースになっているとしたら何てドラマティックな人生を送る人がいるんだろうと感嘆しました。
フランスの田舎町から突然エリゼ宮のお抱え料理人に…。訳は特に語られませんが(だれだれの紹介っていう程度)、そこで、一皿一皿丁寧に料理をし、大統領がおいしく食べたのか?食べ残しはなかったのか?大統領の好みはなにか?料理をする人なら食べる相手の気持ちを考えてするのが当たり前なのでしょうが、時間や効率に追われるこの時代で、こんな当たり前のことができていない中で、オルタンスの気配りと丹精をこめた料理(見ていておなかがすきました…)が人々を変えていく、そんな様がとても素敵だと思いました。大統領が分刻みの公務の間にオルタンスと10分の会談を設け、それが35分にも及んでしまうのは、大統領がオルタンスとの会話に人間としての会話を楽しんだからでしょう。
また、最初は頼りなかったニコラ(最初のシーンでたばこを吸っていましたが、料理人失格な感じが最初からでてました…)もオルタンスが「この料理少し甘くない?」という問いに対して、「いやこれでいいんだ、作られたお菓子ではなく、子供のころに食べたお菓子みたいだ」と返すシーン。オルタンスの姿勢が一人の人を変えたんだなぁとジーンときました。
オルタンスの戦いは、男のシェフの意地、食事を楽しむことを知らない、役所の担当者などさまざまにわたり、ついに大統領を楽しませることができなくなり挫折してしまいます。
直前に、突然大統領が真っ暗な厨房に訪ねてきて、「君はいじめられているんだね。わたしもだよ。ただ、逆境こそが人生のトウガラシだ」と言って励ますシーンも、料理を通してミッテランがオルタンスを信頼しているということがはっきりわかるシーンでよかったです。
物語自体は、オルタンスの現在=南極付近の研究基地での仕事と、過去=官邸料理人の仕事がクロスオーバーする形で進みますが、オルタンスが南極での最後の一日、仲間たちが盛大なパーティーを開き、蛍の光を歌うシーンは泣きました…。そして、なぜ南極まできたのか、次のステージに進むため、新たな地に挑戦しに行くためという最後には、突然、エリゼ宮に呼び出され、孤軍奮闘し、それでも失意のうちに辞めなくてはならなかった…そして、そこでも自分の人生をしっかり見据えて一生懸命頑張ってきた人の姿というのに、とても感動しました。
物語自体は派手でもなければ、無理に押し付ける形のものでもなく、内容もすんなり頭に入り、すっきり感動できた、そんな素敵な映画でした。