「映画の後には旨いワインで、この作品を肴に飲みたくなる映画」大統領の料理人 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
映画の後には旨いワインで、この作品を肴に飲みたくなる映画
最近では、朝夕は大分涼しくなって来た。いよいよ秋到来だ。そしてこの季節の大きな楽しみの一つは、美味しい料理である。
そう食欲の秋に相応しい映画と言えば、この「大統領の料理人」は正に極上のフレンチでした!
しかし、この作品のファーストシーンは、この題名からイメージすると、予想外の映像が映し出される。この画面が本題とどの様に繋がって行くのだろうか?と考えていると、画面がタイトルバックに代わると、田舎道を走行する車の空撮が続く。
本当に、こう言うドラマの入り方をされると、観客は自然と物語の奥深くへと興味が沸いて行くものだ。流石は映画文化発祥の国フランスである。巧いと舌を思わず巻く。
そして、この田舎道及び、豊な山々を囲む農場や草原などの自然の原風景こそが、その後の物語にも、重要な要素となって行く辺りは憎い演出だ。
更に続けて、この空撮を見せる事で、フランスと言えば、パリや、避暑地カンヌやニースなどの観光都市ばかりを想い浮かべてしまうものだが、そう言った観光の顔よりも、実はフランスは農業大国である事も自然に見えて来るのだ。
ちなみに、我が国の食料自給率は、2009年までの農林省の統計では大凡40%で有るのと比較して、こちらのフランスでは170%も確保されている、正真証明の農業大国である。
そんな、農業国であればこそ、豊富な食材と歴史が培ってきた文化の一つとして、美味なる伝統料理の数々が誕生をしたのも納得のいくところだ。
世界的にも、フランス料理の素晴らしさを知らない人はいない。そしてそのフレンチ料理界の中でも、最高峰の料理を結集させる所は?と言えば、勿論大統領の料理番となるだろう。
そんな、エリートシェフの仲間入りを急遽しなければならなくなった、ヒロインの葛藤と奮闘・努力の日々の様が淡々と描かれて行きます。正直決して、観ていて気持ちの良い状況ばかりではない、厳しい現実の男ばかりの料理界の中で、紅一点のオルタンスは大統領のお気に入りの料理を次々と調理し続けて行き、やがては、徐々に廻りの人々にも変化が、起こり始めると言う一種のサクセスストーリーの一つでもあります。
映画の中で紹介される料理の数々の綺麗で、実に美味しそうな画面には、思わず釘付けになりそうでした。
映画では、料理の香りとテイスティングが出来ないのが、唯一の難点でもありますが、フランスの家庭の素朴な料理に始まり、大統領の招待客の料理に至るまで、数々の料理を目で楽しむ事は充分出来る楽しさ一杯の映画です。
後半の急展開のテンポがやや気にはなるところでありますが、しかし、実際に、ミッテラン大統領時代にいた女性シェフの話をベースにこの物語は描かれたと言います。
そして、もしも貴方がご自分の仕事に不安を感じる事や、悩みがあるのなら、この作品のオルタンスを観たならば、元気は回復間違い無しだと信じて止まない、この秋一番美味しい映画でした!是非このスパイスの効いた映画をご堪能下さいね!満腹間違い無ですよ。