「一番の被害者は誰か。」砂漠でサーモン・フィッシング ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
一番の被害者は誰か。
今作を観てまず感じたことが、他のレビューに書かれていて大笑^^;
一方向の物言いで大変申し訳ないが、映画では、
アラブ人って大富豪かテロリストしか観ていない気がする。だから、
今作のアラブ人大富豪が(イエメンのイケメン)善人なのか悪人なのか
そこがまず分からない。しばらく観ていくとお人柄が判明するが、
いやいや、顔だけじゃまだ分からないぞ。イエメンで鮭釣り?なんて
言ってるけど、ホントは鮭爆弾じゃないのか?(ごめんなさい)なんて
不謹慎極まりない妄想(だって仕方ないじゃない)すら覚えてしまう私。
もっと一般のアラブ人(すべて善人体制で)も描こうよ、映画界。
元も子もない話で始まって申し訳ないけど、
今作だって負けず劣らず元も子もない話^^;というか、現実味がない。
まさかノンフィクション…!?と思わせる軽妙な語り口と奇想天外な
公共事業?の破格体制に口アングリ…になることは必至。
ご安心ください、フィクションでした^^;
いや、でも、ここまでの話にするならコレ、実話であってほしかった。
ムリな話なのは冒頭歴然、ユアン演じる博士も
「何バカな話してんだ?アンタら」って顔で終始挑んできますからね~。
このブラック具合が堪らなく面白かった。
そう、今作で面白いといえるのは、ほぼそういったところに尽きる。
あり得ない計画をあり得る計画にしようと奮闘するコメディ?であり、
政治風刺を絡めてあり、恋愛話であり、偉大なる釣り人生の話である。
ハッキリいって、テーマが散漫なのだ。(あ、言っちゃった)
イエメンの鮭釣り…に観点を絞れば、それなりに観応えはある。
英国のやり過ぎ広報官(S・トーマス!)の猛暴ぶりには圧倒されるし、
やる気のない博士が自然と共存し、富豪や代理人と心を通わせるのは
観ていて心地良い。(なんたってあの奥さんじゃねぇ~^^;)
まさか、こんなところで、人生の転換期を迎えるとは。っていう、
誰もが(誰もじゃないけど)迎えるかもしれない、予期せぬ未来の扉を
開いてくれる不思議な作品なのだ。
…なぜ、このテーマだけに絞らなかったのだろう(爆)
ユアン博士と代理人エミリーとの恋愛(に至るかどうか)問題もさほど
ドロドロとかドラマチックに描かれるわけではないので、焦点が逸れる
心配はないものの、結局二人とも最愛(だった)人を差し置いて…という
半ば三角関係モノに発展させてしまったのがイタイ。
ユアンの奥さんはいいとしても(あれじゃあ、最後まで悪役だもんね)
エミリーの軍人恋人はどうなんだ?思わず「マイ・ブラザー」みたいな、
あんな展開になっちゃうのかと思ったが、あれ可哀相すぎやしないか。
まぁ…過去の遺物ってこういうことかと、お悔やみを申し上げるのみ。
鮭釣り計画の成功…と破壊、不倫問題のビックリ展開…と結末、
最後の後味ですら、不思議な方向へ持っていかれてしまうのである。
いや、爽やかといえば爽やかな結末になるのか?(博士が主人公だし)
不思議だ、不思議だ、と思っていたら、あっという間に終わってしまった。
せっかくの放流から遡上、とても楽しみにしていた映像は非常に少なく^^;
あっけないと言われればそれまでだが、やはり地域住民の理解が優先、
なんだか選挙活動と相まって、公共事業のあらましを見せられたような、
だけど命に関わるテロ(やっぱり描かれる)だけはご免だぞ!が強く残る。
イケメン大富豪の釣りへの想いは揺るぎなく、彼の一言一言にはその
偉大な人間性をはかることができるが、何事もまずは地域住民の理解、
志だけで物事は成功しない。ってそんな常套句に納得させられる作品。
まぁしかし、久々に普通の役のユアンが観られたのは嬉しい^^;
余談だけど、
私の地域でも小学校の児童が川に鮭の稚魚を放流し、それが見事遡上を
果たした。川をきれいに!のプロジェクトが身を結び、新聞やニュースで
何度も取り上げられた。確かにその喜びは大きい。
(釣りの極意は分からないけど、やはりひたすら信じて待つことなのね)