「鮭の話ではなく恋愛」砂漠でサーモン・フィッシング Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
鮭の話ではなく恋愛
総合65点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
題名からして興味をそそるし設定は面白いと思う。砂漠で鮭釣りをするにはどうすれば良いのか、どんな問題があってどう解決していくのか、期待が高まった。
しかし実は作品中では砂漠で鮭なんて副次的でたいした問題でもなく、一番の重要な主題は恋愛である。妻と上手くいかない学者の公務員が、共同で鮭の話を進める投資会社の女性社員と幸せになるのかどうかが大切なのである。だから鮭の問題は実に軽く省略されて気が付いたら計画がどんどんと進んでいる。これではこの奇想天外な話の苦労も努力も達成感も伝わってこない。
恋愛話ならば他にいくらでも作品はある。この話の核は鮭の話にしたほうが良かったのではないか。この話ならではの良さが恋愛の下にかろうじて存在するだけでは、一体何のために鮭の話を取り入れたのかと疑問。さらに鮭の下には政治の話も含まれていて、話の筋が散漫になっている。『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』は個性のある動物園を作った話と思いきや人情話だったが、それと同じ失望がある。
調べてみると原作も主題は恋愛小説らしく、話題作りにはいいが鮭の話が中途半端になっているのが不満だった。また恋愛映画に合わせるように演出も軽快で観やすいが、その分深刻性が欠けている。
監督はラッセ・ハルストレムで、『ギルバート・グレイプ』『サイダー・ハウスルール』では新しい環境での経験や新しい旅立ちを爽やかに描いた。だがこの映画の結末は部隊が全滅する中でかろうじて生き残った軍人の彼のこともありあまり後味が良くない。何か清々しく終わった気がしないのも気になった。