劇場公開日 2012年11月17日

「TVドラマの劇場版なめんじゃねえぞ!」任侠ヘルパー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0TVドラマの劇場版なめんじゃねえぞ!

2014年8月13日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

興奮

極道と介護という異色の組み合わせで人気を博した同名TVドラマの劇場版。
毎度の事ながらTVドラマ版は未見。

安易なTVドラマの映画化はあまり好きじゃないし、本作もそうだろうと思っていたが、これが思いの外良かった。
TVドラマ版を見てなくてもすんなり見れる作りなのがまた有り難い。

彦一という“漢”に惚れる。
体の隅々まで染まった極道だ。
でも決して悪人ではない。
お天道様の下をまともに生きていけないのを知っている。口は悪くとも、むやみに暴力を振るったりしない。手を出すのは、どうしても許せない奴らだけ。

オンボロ施設から逃げ出そうとする老人に語りかけ、背中に手を当てるシーンに、彦一の人間性を見た。
駆け寄り泣きついてきた少年の頭を撫でるシーンに、彦一の温かさを見た。
安田成美演じるヒロインの認知症の母に手を振るシーンに、彦一の不器用な優しさを見た。
施設や老人たちを守る為、身をボロボロにして戦うシーンに、彦一の強さを見た。
「弱きを助け、強きを挫く」
かつて多くの名優たちが任侠映画で演じた漢が、そこに居た。

介護問題にも一石を投じる。
彦一たちが仕切る施設は最低最悪の環境。不潔、悪臭…こんな所で人生の終焉を迎えたくない。
元々見捨てられた老人たちを糧に年金を搾り取るのが目的だったが、弱い彼らを思い、改善する。
この時、皆にハッパをかけるのがいい。
半分死にかけていた老人たちが、今居る場所をより良い場所にしようと動き出す。
そうする事により、周りと触れ合い、見捨てられた彼らにとって、ここがかけがえのない唯一の“家”となる。

巨大施設も登場する。
清潔で豪華設備、多くのヘルパーも待機している。
しかし、全ての介護を事務処理的に行い、重度の認知患者は薬漬けに。
介護の在り方を問う。

草なぎ剛が見事!
優男のイメージがある草なぎだが、ここまで極道役がハマるとは!
極道の喋り方から仕草まで、すっかり板についている。
SMAP一の演技力は、大袈裟な言い方ではない。
キャストはTVドラマ版から一新しているらしいが、皆好演。夏帆のキャバ嬢も意外に合ってた。
そんな中、TVドラマ版からの友情出演、黒木メイサは明らかな蛇足…。

極道を美化したりせず、高齢化や介護問題をもシビアに描きつつ、感動とエンタメ性をきちんと織り交ぜる。
単なるTVドラマの劇場版と思うなかれ。

近大