「アニメでも違和感無く楽しめます。」スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメでも違和感無く楽しめます。
2012年8月中旬に新宿ピカデリーのスクリーン4にてレイトショーで鑑賞。
SF作家ロバート・A・ハインラインが産み出し、あらゆるSF作品に影響を与えた『宇宙の戦士』をポール・ヴァーホーヴェン監督が『スターシップ・トゥルーパーズ(“1”)』として実写化してから、15年(本作鑑賞当時)が経過し、2004年の『2』、2008年の『3』に続くシリーズ第4弾となる作品がCGアニメーションとして製作され、上陸し、このシリーズの大ファンである自分にとっては、見逃せない一作として劇場へ足を運んできました。
小惑星帯に設けられた地球連邦軍の要塞“フォート・ケイシー”において、バグズの大群に襲われた数人の兵士たちを救出し、地球への帰還を目指して前進していた戦艦“アレジア号”の乗員である若き機動歩兵隊員たちは、将軍へと昇進したジョニー(デイヴィッド・マトランガ)の命令を受け、フォート・ケイシーでの救出任務中に、その場を離れた戦艦“ジョン・A・ウォーデン(JAW)号”の捜索、それに乗り込んだ戦略大臣のカール(ジャスティン・ドラン)の救出を命じられ、隊員たちはJAWの艦長のカルメン(ルーシー・クリスチャン)を伴い、歴戦の英雄ヘンリー(デイヴィッド・ウォルド)の指揮のもとで出撃する(粗筋、以上)。
私はこのシリーズのファンで、小学四年生の時に劇場で『1』を観て、痛快な描写の数々とライフル一つでバグに立ち向かう主人公たちのカッコよさに魅了され、虜となり、『2』はスケールダウンしたものの、7百万ドルとは思えないぐらいのバグの登場、アイディア勝負の密室スリラーを楽しみ、『3』では陰謀劇と新手のバグの出現にパワードスーツ“マローダー”の登場など、どれも満喫し、『2』を劇場へ観に行けなかった事は今でも後悔しているほど、全ての作品を愛してやみません。アニメになった本作も、過去作と同じぐらいに楽しめ、不満は全くありません。
今までのシリーズにあったプロパガンダ描写が無いのは残念ですが、評判が悪く、無かった事にされたも同然な『2』の要素を再利用し、同作のパラサイト・バグは出てきませんが、ヘンリーの設定と境遇はダックス大尉(リチャード・バージ)、アイス・ブロンド(メリッサ・デイヴィス)がシングル・マザーで夫が戦死しているという設定はサハラ二等兵(コリーン・ポーチ)の設定に通じていて、そこにジョニー、カルメン、カールの『1』のトリオの再結集(カルメンとカールの顔はデニース・リチャーズやニール・パトリック・ハリスに似ていないので、多少の違和感はありますが、これは恐らく、肖像権をクリアしなかったのだと思いますが、キャラとしては違和感がなく、徐々に馴れてきます)、『3』のマローダーの進化型モデルの登場、『2』ではフレーズのみ、『3』では未使用だった故ベイジル・ポールドゥリスによる『1』のメインテーマの再使用(劇中だけでなく、エンドロールでも流れれば良かったのにと思えるところがあります)など、シリーズのファン向けの要素が次々と使われ、アニメ版とは思えないぐらいに『スターシップ・トゥルーパーズ』の世界観を維持、発展させていて、シリーズお馴染みの無意味なお色気描写や魅力的なヤラレ役な脇役キャラも健在で、私としては普通にシリーズの一つとして認められる作品です。
『3』が公開された時は、それが“シリーズ完結編”と言われていましたが、その終わり方は「まだ、続編が出来そうだな」と思えるもので、続編が作られるのを願っていたので、アニメになっても、今までの作品の設定を引き継いだ形での続編の誕生は嬉しく、過去作で脚本や製作(“3”では監督も)を担当したエド・ニューマイヤーと“元祖ジョニー・リコ”ことキャスパー・ヴァン・ディーンが製作総指揮で参加しているために、観ていて、とても安心感があり、既存のアニメとは違う質感で表現し、それが実写のように見える(フォート・ケイシーの件で映る小惑星帯の映像は、“1”で戦艦“ロジャー・ヤング号”が動き出す時の正面に位置する月面の質感を思い出させます)ので、この新感覚な表現に驚きました。『2』以降は低予算な作品(よって“1”だけが好きな人にはお薦めできません)となり、製作時の状況が常に話に反映され、本作では“マローダー”の製造コストが掛かりすぎる為に、ジョニーと彼の直属の部下の数人分以外に用意が出来ず、それ以外の兵士は一応、宇宙空間でも活動できるぐらいの強化アーマースーツを身に付けてはいても、今までと同様にライフルを片手にバグに立ち向かわなければならないという状況にある設定が面白く、兵士の一人一人のキャラクターも魅力的で、カンフーの使い手、信仰心(“3”のラストで連邦軍は禁止されていた信仰を解禁していました)に溢れた男、スナイパー・ライフルで戦う事に情熱を燃やす女性兵士、モテようと努力するも常に空回りしても、どこか憎めなかったりとその面白さは尽きず、一部の兵士が自己紹介を兼ねて、殴り合って仲を深めるといった日本の不良漫画っぽい要素を取り入れたりと、新鮮さがあるところも好印象で、本作のスタッフがシリーズを愛してやまないというのが伝わってきます。
現在、ハリウッドでは『スターシップ・トゥルーパーズ』のリメイク企画が進行中で、原作に忠実(“1”でディナ・メイヤーが演じたディジー・フローレスが男性になる等)に作られるという噂があるようですが、本シリーズは本作でも完結しておらず、DVDやブルーレイのメイキング・ドキュメンタリーのなかでキャスパー・ヴァン・ディーンが「今後もこのシリーズは発展できる」と語っているので、更なる続編を期待(サム・ライミの“死霊のはらわた”みたいにリメイクが出来ても、オリジナルの新作が作られるような状態を)したい(アニメでの続きなら、本作のスタッフの参加を、実写に戻すならヴァーホーヴェン監督のプロデュース、ニューマイヤーの脚本、キャスパー・ヴァン・ディーン主演、どちらのパターンでもプロパガンダ要素の復活を希望)です。今後がどうなるのかは分かりませんが、ジョニー・リコの「命を惜しまず戦え!山猿ども」とか「奴らを皆殺しにしろ!」といった名台詞やバグの攻防戦を再び楽しめる日が来ればなと願っております。