「まだ戦争には間に合う」この空の花 長岡花火物語 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
まだ戦争には間に合う
大林的戦争三部作とも名づけられた本作品、『野のなななのか』(2014)、『花筐』(2017)。「ふるさと映画」の一環でもあり、戦争を知らない若者たちに作ったというメッセージも色濃く感じられる。さらに東日本大震災にも関連付け、戦争末期の長岡空襲とその後の長岡花火への流れを描いた内容だ。大林監督自身初のデジタル撮影だということですが、昔からのフィルム合成による特殊効果は健在だった。
高校生・元木花による脚本で長岡花火大会と同じ日に柿川で行われた演劇が中心ではあるが、序盤ではタクシー運転手(笹野高史)の説明で7月20日に疑似原子爆弾が投下された地点や焼夷弾による説明がなされていて、1480人余りが犠牲となった8月1日の長岡空襲について学ぶことができる。また長岡出身の山本五十六、米百俵の小林虎三郎、河井継之助、そして堀口大學の話も貴重だ。
人が恐怖を感ずるのは想像力を超えたときだという。敵を恐怖に陥れるのは簡単、想像力を奪えばいいのだ。戦争について多くを知っていれば対策はできる。映画という虚構ではあるが想像力を働かせるに足りうる描写によって戦争の無意味さが伝わってくるのです。高校生たちの演劇は十分すぎるほどの恐怖を与えてくれて、焼夷弾という人を殺すためだけの武器に怒りをも感じる。
ストーリーは松雪泰子演ずる新聞記者がさまざまな人と出会い、長崎と長岡の関係や元恋人である教師の高嶋政宏への思いを描いたもの。一輪車や山下清の存在によってノスタルジーを感じる映像と、後半にモデルとなった人やインタビューも重ね、ユニークな構成となっています。だけど、不思議なことに抽象的であったり、恐怖だけを描く内容から自然に涙がこぼれてくる。平和と復興・・・感じるのはそれだけはないのです。
爆弾を花火に!山下清演ずる元たまの石川浩司も印象に残るけど、サックス奏者の坂田明も強烈な印象。1945年広島に生まれた坂田明による魂のサックス演奏も注目だ。右手だけでプレイする姿も凄まじい。
kozzyさん
コメントを有難うございます。
観賞した映画館で「一周忌追悼上映」として上映された中の一作でした。映画館で観られたのは本当に幸運でした。
大林宣彦監督の作品は(新参者の私が語るのはおこがましいですが)、一度観ると忘れる事が無い程に、映像と台詞にインパクトが有りますよね。この作品では、高校生達の演劇のシーンが強烈に目に焼き付いています。戦争は本当に恐ろしい。