劇場公開日 2013年4月27日

  • 予告編を見る

「シュワちゃんのアクションだから細かいことはいいんだよ」ラストスタンド 永賀だいす樹さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シュワちゃんのアクションだから細かいことはいいんだよ

2013年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

アーノルド・シュワツェネッガーの出世作は『ターミネーター』『ターミネーター2』で、劇中のマッチョな姿がとびきり印象的。
『ターミネーター』は1984年の作品だが、いまだにそのイメージが強いんじゃなかろうか。

だから本作で映画復帰すると聞いて、わりと眉唾な思いを抱いていた。
なにしろ『エクスペンダブルズ』のカメオ出演時、かつての肉体派が筋肉を落とした姿になっていたのだ。「彼はもうアクション俳優じゃない」と思ってしまった。
ところが本作をみて、やっぱり彼はアクション俳優なのだとわかった。

肉体的に衰えているのは間違いない。
劇中、大丈夫かと聞かれて「年かな(Old)」と答えるなど、シュワルツェネッガーの背景ともダブったセリフがあるが、まぁ、確かにターミネーターのような肉体からは程遠い。
がっしりとはしているものの、ボディビルダー・チャンプであったイメージとは結びつかない。
それでもアクション俳優であることには間違いない。

彼のアクションには汗と血とインパクトがある。
筋肉の躍動が伝わってくる。
無反動に見える散弾銃の射撃にしても、大口径リボルバーの片手撃ちにしても、リアリティを感じる。

ただ本作のシュワルツェネッガー、役どころとしては元ロス市警の麻薬捜査官で今は田舎町の保安官となっていて、両手に対物ライフルを構えて撃つというようなありえない演出はない。
設置式の機関砲が出てくるものの、台座から引き剥がして撃つということもない。観客はそのシーンをかなり期待したと思うけれど、そういうことはやらない。
それでも彼は間違いなくアクション俳優だ。

別にスルーしとけば無事に済んじゃうであろう事態にも、「俺の街を守る」と誇り高き男の姿を見せ、仲間の危機には弾丸飛び交う中も突っ込んでいく。
そんな姿は『エクスペンダブルズ』のカメオ出演時には微塵も想像できなかったくらいだ。

こんな具合にシュワツェネッガーの存在感バリバリの作品なので、彼の演じるレイ保安官と脱走した麻薬王の激突までは割りとテキトー。
「マンガかよ」とツッコミ入れたくなる奇策で移送中に逃走、警備に当たっていたFBIも見当違いのところに走っていってしまう。
逃走用車両のコルベットZR1特別仕様にしても、「つい最近、オートモーターショーで盗まれた」とか。
いや、いいんだ。本作はシュワルツェネッガー保安官がアメリカ-メキシコ国境を守るため、極悪人と激突する映画なのだから。

シュワルツェネッガー保安官の街では、麻薬王の部下たちがボスの逃走ルートを整備して待ち構えているので、そいつらとガチンコ勝負になる。
博物館の骨董品で武装したシュワルツェネッガー保安官らvsバズーカや自動小銃で武装した犯罪者集団。
常識的には勝ち目なし。事実、保安官サイドの人たちは、わりと都合のいい西部劇の様相を見る場面もチラホラ。アンタ、そんだけ前に出たら射界通り過ぎでしょう的なノリになっちゃうんだから。
うん、でもいいんだ。シュワルツェネッガー保安官が散弾銃をバンバン撃ってくれるんだから。ほら、『ターミネーター2』のラストを彷彿とさせるでしょ。だからいいじゃん!

むしろ麻薬王とのガチンコのタイマン勝負の方が見物。
正直、チェイスはセンスないと思ったが、やはり肉弾戦はカッコイイ。
そんなシュワルツェネッガー保安官に「終わってる」とかいう麻薬王がイケナイ。ボコボコにされても仕方あるまい。
予告編でも見せているが、バックドロップとか、保安官の逮捕術じゃないよね、それ。

まるで某メトロシティ市長。パイルドライバーじゃないからってインパクトは変わりませんよ?
しかしまぁ、ここまでやってくれたら拍手喝采するしかないじゃないか。

一つ難癖つけるとしたら、映倫区分がR15+ということだろうか。
なんか無駄に残酷な描写を挿入するので、そこさえマイルドにすれば全年齢対応になったはずなのに。
とっても惜しい。

では評価。

キャスティング:8(アクション映画でアーノルド・シュワルツェネッガーが出てるんだからいいでしょ)
ストーリー:6(シュワツェネッガー保安官に極悪人をぶつけてくれたらそれでいい)
映像・演出:8(同じところで狙撃したら反撃食らって死ぬだろうとか文句言わない。シュワルツェネッガー保安官が戦ってるんだもん。素直に拍手だ)
チェイス:6(スピード出てるわりに無茶な場面がチラホラ。そこで降りたら死ぬんじゃ・・・みたいな)
肉弾戦:10(シュワルツェネッガーのブレーンバスターも見事なら、敵役のサブミッションとかリアルな殺し合いが迫力満点)

というわけで総合評価は50点満点中38点。

アーノルド・シュワルツェネッガー復帰映画として楽しく鑑賞しよう。
面倒くさいことは放っておいていい。彼のアクション・シーンは間違いなく楽しいから。オススメ。

永賀だいす樹