マンク 破戒僧のレビュー・感想・評価
全1件を表示
説教により聴衆の魂を救う・・・などといった崇高な物語ではなく、悪魔に魂を売ってしまった真面目な修道士のお話。
ストーリーはアンブロシオとバレリオの恋物語なのかとも思ってた。カプチン派の修道院にて、火事により鼻も唇も焼けただれたために日光に当たると症状が悪化するから仮面をしていると紹介された見習い修道士バレリオ(フランソワ)。華奢な体つきからも女であることはすぐにわかるのだが、ばれないように仮面を被っていただけなのだ。
彼女の目的はアンブロシオに会うためだったが、何のためだったのかよくわからず物語は進行する。アンブロシオは不思議な夢を何度も見る。祈ってる女性に近づこうとしても触れられないのだ。「それはマリア様じゃな」などと老齢のミゲル神父は告げるのだが、その意味は誰にもわからない。そして、毎晩のように激しい頭痛に悩まされるのだが、自分で育てたバラ園で何とか癒される。そこへバレリオがやってきて頭に手をかざすと・・・あら不思議、頭痛が治ってしまう。そこで仮面を取り、自分が女であることを教えるのだが、規律を重んじるアンブロシオは「明朝出て行け」と告げる。
バレリオは、最後のお願いと言ってバラを1本彼に摘ませようとするのだが、彼は毒虫に咬まれ、生死をさまよう重症となる。看病するバレリオは魔法のように毒を吸い取り、身体を重ねる。不思議な力で彼は一晩で回復してしまった・・・
ストーリーはもう一つ。アンブロシオの説教にメロメロになってしまった商人の娘アントニエ(ジャピ)。教会で出会った貴族の息子ロレンゾと互いに一目惚れ。しかし、身分の違いのためなかなか恋は進展しない・・・
この二つのストーリーがどう結びつくんだ?と予想もつかなかったが、バレリオはどうも悪魔の使者であり、アンブロシオの情欲を解き放ち、やがてアントニエに対する思いを遂げさせようとするのだ。もう欲望は留まることを知らない。夜這いをかけるため、バレリオの魔力を借り、そのままベッドイン。窓の外にはギター弾きとともに求婚の歌を捧げているロレンゾ・・・
アンブロシオとアントニエがベッドでぐったりなってる現場を母親が見つけ、手にはハサミを握りしめていたが、気づいたアンブロシオは逆に母親を刺殺してしまう。母親は彼の肩にある痣を見て気付いた。「死んだと思っていた息子だ」・・・なんと、アンブロシオは血のつながった妹と関係を持たされてしまったのだ。なんとおぞましい悪魔の力。そして彼は教会と市民の裁判にかけられ火刑となったが、死に際、冒頭で告解していた近親相姦親父が「仲間になったな。魂をよこせ!」などとそそのかす。
衝撃作!18世紀に長い間発禁処分となっていた作品らしいが、これを悪魔のせいだということにしたプロットによって若干救われている気がする。もちろん、バレリオという抽象的な悪魔なのだが、信仰心の篤い者であっても、ちょっとしたきっかけで運命が変わるものだという教訓めいた部分もある。ただ難解なのは、若き修道女に恋人がいて、妊娠が発覚したためにシスターに投獄され獄死してしまうのは、アンブロシオの罪なのか?彼女は幽霊となって現れるが、ちょっと可哀そうだぞ。
全1件を表示