「みんな大好きグイ・ルンメイ」台北カフェ・ストーリー よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
みんな大好きグイ・ルンメイ
脱サラして妹とカフェを開店した女性の話。
36個故事っていうくらいだから、世界各地から持ち帰った36個の石鹸に寄せた物語が映画の中心かと思ったら、物々交換を通じて起きるカフェに集まる人々の話。
物々交換。贈与と互酬性。学生時代に文化人類学で出てきた言葉を思い出す。そういえば、その授業の教授のフィールドワークは台湾の山岳民族だったような記憶が。
このカフェでお金をとるのは、コーヒー(とスイーツ)だけ。店内の物品については決して販売してもらえず、他の物品との交換によってのみ手に入るのがルール。
貨幣経済に慣れた我々はこのようなルールを前にすると、価値の判断基準がないことに混乱する。しかし、映画で何度も言及されるように価値は人によって変わるし、だからこそ自分にとって思いもよらない値打ちのあるものを手にする可能性がある。だから通貨を介在させない物々交換でも何の問題もないどころか、両者の幸福を生み出す近道をそこに見出すことができる。
互酬性に基づく人間関係を、もしも現代社会に目に見える形で築いたら、という人間関係の原初形態を夢見るストーリー。
「薄氷の殺人」で一目ぼれしたグイ・ルンメイの特集ということで、本日3ルンメイ。
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