「感動した。・゚・(ノД`)・゚・。」希望の国 初台験さんの映画レビュー(感想・評価)
感動した。・゚・(ノД`)・゚・。
単純な脱原発映画じゃない。
これは園監督流のメロドラマであり、そして震災以後の日本を描くに当たって園監督が辿り着いた結論。
『愛のむき出し』『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『ヒミズ』と、一貫して親との確執、親子の殺し合い、そして家族崩壊を描いてきたけど、今回はそれに反比例するかのような家族愛、親子愛、夫婦愛をこれでもかと前面に出してる(・∀・)イイ!!
またその愛情描写が、これまでの映画で描いてきた憎しみの裏返しと言ってもいいくらいの過剰な親子愛、夫婦愛∑(゚ω゚ノ)ノ
やっぱり震災、そして原発事故というのっぴきならない大災害を目の前にすると、普段は反目しあってても寄り添いたくなるもんなのか。
また立ち入り禁止区域を定めた看板と境界に設置した塀の何とも冷たくて無機的なこと(;´∀`)
それまで自由に出入りできてたのが、政府は情報をひた隠しにして無理やり境界を作ってその無機的な塀で住民を断絶する。
田んぼと畦道が広がってる場所に無機的な冷たい塀が横断してる風景は、それだけで何とも言えない不穏な空気が漂う。
夏八木勲も、退避命令が出たにも関わらず頑として家を出て行こうとしないのも、郷土愛なんかじゃない。ここにじいさんと親父、そして俺たち夫婦が植えた木がここにあるからだ。これを見捨てることは家族を見捨てることだと言う。
しかし息子夫婦にはここを出ていくよう促す。
俺たちは老い先短い。だがお前ら夫婦はこれから子供を産んで育てなければならない。だからここにいると危険だと。
そして大谷直子は認知症を患っていて、急に外に出たらどうなるか分からないという危惧もある。
神楽坂恵は妊娠してから放射能汚染を必要以上に気にして、宇宙服と見まがうばかりの重装備で日常生活を過ごす。
確かにギャグ描写ではあるけど、最初あれだけ放射能汚染を気にしてた住人も喉元過ぎれば熱さを忘れる。
ここに福島第一原発のメルトダウンで放射能被ばくを最初気にしてたのに今となっては誰もそんなこと気にしてないという今の日本人に対する皮肉が利いてる(・∀・)ウン!!
「たった1ヶ月でもう忘れたのかよ!!」
何でもそうだけど日本人は特にこの傾向が強い。
一方実家ではとうとう牛の殺処分命令が出て、もう行くところもやることもなくなった老夫婦は、最後猟銃で死ぬ。
ガイガーカウンターを出す時に棚を開けたら一緒に猟銃も入ってるのを見せるあたり、この映画の終わりをさりげなく上手く予告してるな~(・∀・)イイ!!
最後死ぬとき、恐らく大谷直子は一時的に正気に戻ってる。
認知症はたまに正気に戻ることがあるらしいから、前半でもラストでも土いじりをしてる時は正気に戻ってるのかも知れない。
清水優と梶原ひかりのカップルは、実家が津波に流された後も両親を探し続けて、その時ビートルズのレコードを探してるという子供の兄弟に会って「1歩、2歩、3歩なんておこがましいですよ。」「これからは日本人は1歩1歩1歩ですよ。」と言ってるのを聞く。
かつて津波に流されて死んだ子供の零なのか、それとも座敷童みたいな守り神なのか・・・
河原崎健三の医者が言う「テレビが嘘をついてるんじゃありません。医者が嘘をついてるんです。」の台詞はほんと~~~~~に感慨深い。
テレビ自体は嘘をつくと言うより、嘘をついてる人間をそのまま映してるだけだから、映像自体は嘘はつかない。
医者もそうだけど政治家も学者も評論家もテレビのコメンテーターもキャスターも嘘をつく。
テレビはそれを流してるだけ。
杭が打たれたという象徴的な台詞と描写、そして杭を打つ音を延々としつこく流すあたり、杭をいまだに撃たれ続けてるんだということを言いたいんでしょう。
原発事故を題材に取りながらも、今の日本社会、日本人に対する痛烈な皮肉が込められてると思う。
認知症のお母さんに、あたかも『リア王』の道化師のごとくシニカルな指摘をさせる辺りもΣd(゚∀゚d)イカス!
そして遠く離れた場所に行った村上淳夫婦も、実は高濃度の放射能に汚染されているという意地悪な設定も園監督っぽくていいじゃないか(*´・д・)*´。_。)ゥミュ
ラスト「愛があれば大丈夫」という台詞も、かなり使古された言葉ではあるけどかなり心に沁み渡る。゚(゚´ω`゚)゚。ピー
清水優も梶原ひかりの両親は見つからないし、気が済むまで探させたけどもう駄目だとあきらめがついた時にプロポーズをする。
とにかく愛、愛、愛、愛で映画を席巻してる。
悪人は1人も出てこない。
特殊な能力を持った人も出てこない。
そしてこういうことは東日本大震災の時にもあったんだろうな~と想像に難くない。
今の日本人ならば絶対観ておかなくてはならない傑作です(・∀・)イイ!!