「今そこにある危機。」日本沈没(1973) MITEEEEEEZOOOさんの映画レビュー(感想・評価)
今そこにある危機。
阪神大震災、東北大地震、そして来たるべき東南海地震。実質70%の確率でいつ起こってもおかしくないとされ、コロナウィルスの最中の地震で今、まさにこの時に南海トラフ地震が来たらどうなるのだという疑問と恐怖に駆られ、考える何かしらのヒントは無いものかの想いで鑑賞!
深海潜水艦・わだつみで日本海溝直下の大規模な地殻変動の異変に気づいた小野寺と田所博士。このままいけば日本列島は海中に沈没する大惨事になりうる事態が予測され、折をなすかのように各地で火山が噴火や大規模な地震が発生…
小松左京氏の原作SF小説を映画化約30年以上前の作品と最初は見るのに抵抗があったものの、もっと早くに見ておけば良かったと思い知らされた。専門的な地震が起こる仕組みや現実に起こりえる事態を本当に上手く考察し簡潔に物語に繋げており、自然の前では如何に人間はちっぽけで蟻んこの様な小さな存在なのかという現実の有様をまざまざと突きつけられる恐怖。主要登場人物の深海潜水艇の操艇者。藤岡弘、地球物理学者の小林桂樹。内閣総理大臣の丹波哲郎等の人間模様と名優達の演技の共演がまた渋くて良かった。日本沈没までのXデーを知った藤岡弘、の街を彷徨いどうすることも何処にも逃げ場所がないと日常を当たり前に生活する人々に届かけぬ想いで訴えかけるシーンは皮肉になるかもしれないが、今の平和ボケしている日本人に訴えかけているかのようにも見て取れ、丹波哲郎総理大臣の国家の危機に対して国のトップたる者がいかに処すべきか、前人未到の難しい難曲にどう対処する最中、政界・財界のトップによる“D計画”の3枚の選択の中の1枚「なにもしない」このまま沈みゆく日本と心中という選択肢が最良とされながらも、それでも1億人の国民や日本人としての民族の存亡や在り方を考え最後まで日本の行く末を心中覚悟で見定める姿には、これが国民がついていきたいと思えるトップの姿だと思えた。30年前の作品ということながら地震で倒れる家屋や建物はある程度時代感を感じさせる部分は有りながらも、リアルな人間描写や日本列島が海の底に沈んでいく姿は、日本人なら誰しもが故郷を無くした失ったかの様な感覚に陥るはずだ。ラストまで現実的に救いは何処かにあるものの喪失感と哀愁を感じる作品だが、日本という国の在り方や、海外と在り方。非常事態や危機感、普段からの個人の心構え等。約30年前から訴え続けられている事にどう備えるべきかを試されているようなメッセージを受け取った気がする。
尚且つコロナ禍の影響で見えて来たのは…模範的でもあり、当たり前の対応をしてくれる政府や役人であった。やはり、命を掛け国民の事を考えて行動に移してくれる姿こそ人が人で在るべき姿であり、現場で命を掛けた行動が、最後まで諦めない姿勢こそが今の日本には足りていないのではないかと、改めて考えさせられる気がした。政府批判をする訳ではないが、今の現状コロナで感染が拡大してる今だならこそ、自国の利益や名声を優先するのではなく、国民の事を第1に考えて対策を進めていってほしい、フィクションで出来て現実で出来ないわけがないのだから!