「ゼロ グラビティ」ゼロ・グラビティ くまさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ゼロ グラビティ
Zero Gravityを見てきました。3D画面を前方4列目中央で見たので、迫力が楽しめました。
衛星破壊による無数の破片(デブリ)の宇宙ステーション衝突がモチーフ。
中国は2007年1月11日に、自国の気象衛星を標的に衛星破壊の実験を実施した。
中国の衛星破壊実験の標的となった気象衛星「風雲1号C」は、1999年打ち上げ。高度約850kmのまさにもっともデブリが稠密な高度の極軌道を周回していた。破壊実験の結果、風雲1号Cはレーダー観測可能な400個以上の破片に分解した。レーダー観測不可能な微細な破片は数万個以上発生したと推定される。
発生したデブリは、元の軌道に留まるわけではない。与えられた初速によって軌道傾斜角も、軌道高度も変化する。さらに、地球が完全な球ではないことから発生する摂動によって地球全体を覆うように拡散していく。実際、風雲1号Cの破片の一部は、国際宇宙ステーションが利用している高度400km程度まで地球に近づく軌道に入ったことが確認されている。
実験を行うことによって、中国はアメリカに対して「いざとなれば衛星破壊も辞さないし、そのための手段も持っている」というサインを送ったわけだ。それは同時に、中国が将来的にアメリカに対抗する超大国を目指すという意思表示であり「だから我々の意志を尊重せよ」という無言の要求でもあったわけだ。
しかし、国際社会は「中国は、自国の利益のためにはスペース・デブリの放出のような、人類全体の未来に有害なことであっても行う、無神経な国である」と受け取ったのである。そして同時に実験は全世界に対して「中国は何をするか分からない、無神経な国だ」というチャイナ・リスクを強く印象付けることとなった。
この映画では、ロシアが不要になった自国の衛星を故意に破壊したことが発端という設定になっていて、ロシアが悪者。拍子抜けだ。米ソは冷戦が終わる頃1985年に"破壊実験はしない"という申し合わせをしているので、ロシアが衛星破壊をすることはあり得ない。
最後のシーンは、中国の宇宙ステーションに避難してカプセルで地球に帰還。最後の字幕に、何かのDirecter,James Liu という中国系の名前を見つけたが、中国の強い影響が感じられて、日本人にとって(ロシア人にも)釈然としない映画だった。