「衒学として考える考察。そして今の思いはお疲れ様でした。改めて今まで有難うございました。の気持ちです。」シン・エヴァンゲリオン劇場版 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
衒学として考える考察。そして今の思いはお疲れ様でした。改めて今まで有難うございました。の気持ちです。
前作から早7年。まだかまだかと楽しみに思いながらも“この時が来なければ良いのになぁ…”と思っていた「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を鑑賞しました。
で、感想はと言うと…どう解釈して良いのか?と上手く言葉に出来ない所が多数と言うのが正直な所ですが、一言で言うと「良かった。面白かった。今まで有難う。」と言う気持ちです♪
旧作から「リビルド」された新劇場版シリーズを含めた全てのエヴァンゲリオンの集大成で完結編。
前作の「Q」が?を幾つ付けたら良いのかと言うくらいに謎と言うか、置いてけぼり感があり過ぎてフラストレーションが溜まりまくりでしたが、今作でそのフラストレーションを払拭しながらも様々な伏線を回収出来たのか?と言うと、個人的には限りなく伏線は回収出来たのではないかなと言うのが感想。
また、今作の為にQを半ば捨て石の様にしたとするならば…庵野監督、恐ろしい子…w
面白いと面白くないで言えば、面白かったし、ベタ的な展開もかなりサービスされていて、集大成で締めに相応しい感じ。
長く観ていると、“こうであって欲しい”“こうでなければいけない”的な理想や願望、考察がそれぞれにあるんですが、それを上手くスカしたり、敢えて飛び込んだりとワクワクポイントが沢山w
セリフのチョイスが今回は色々と面白いんですよね。ニヤニヤしましたw
それでも話はかなり難しいので、過去作を知らない人には付いていけないのはいつもの通りですがw、何処か閉店赤字覚悟の出血大サービス的なのも入れつつ、媚びない姿勢は逆に嬉しかった♪
いろんな思いがあってもなんかスッと洗い流された感じでスッと納得出来た感じ。いろんな事があったけど終わったら激闘の末のノーサイドみたいと言うか。
まぁ振り返ればこの作品って始まりから終わりまで激闘の日々でしたねw
※ここからはネタバレ多数です。
今までの新劇場版を振り返るダイジェストから、2019年7月6日に公開された「0706作戦」と称されたイベントでの「シン・エヴァンゲリオン劇場版 AVANT1 0706版」でスタート。
もう、これだけでテンション上がりまくりw
その後Qの続きとエヴァの世界観の外界的な日常を描かれていて、そこにシンジやアヤナミレイ、アスカが溶け込もうとする姿が微笑ましくもなんか嬉しかった。
中盤からはNERV=碇ゲンドウ、エヴァ第13号機と移行していくが、最終決戦なんて本筋としての王道な展開ながら超難解で観る側の斜め上どころの騒ぎではないぐらいのブッ飛んだ展開と構成はこうなんだろうなあと思いながらも、理解が難しい。
この辺りが「エヴァ」の所以たる所以。
キャラクターもまさかこうなるとはと思うのもあれば、結局この人は何だったの?どうだったの?と言うのもあります。
その辺りは全てを明瞭にしなくても良いし、それをどう解釈してどう理解するがかこの作品の面白い所と解釈。
何よりも圧倒的なスケール感と独創的な世界観に美術的なセンス。もはや宗教と言っても過言では無いぐらいの構築は映画館のスクリーンで観る為の作品かと思います。
話は説明するには難しいのでまさしく「百聞は一見に如かず」なので観てちょうだい!としか言えないし、要所要所での説明は出来ても「では完結編の説明を」と言われても上手く説明出来ない。
過去にブログで書いた引用ではありますが、2004年にNHKの「トップランナー」と言う番組に出演した庵野監督が「エヴァンゲリオンは哲学的と言われるが、実際はそうではなく「衒学的」(げんがくてき)である。衒学とは知識がある事を自慢する事であり、知ったかぶりという言葉が一番近い。エヴァの一見謎に満ちたストーリーも、何か裏がありそうな雰囲気を出すための演出であり、実際に裏は存在しない。」と言うコメントを発していますが、まさしくそうなんですよね。
ネットなんかでは“あそこのシーンはこうだった”“あれはこうだったから、こうなるんだ”とかいろんな議論が展開されているが、当の本人に“そんな裏は無い!”なんて言われたら、ミもフタもないけど、本人が言っているのならそうだろうw
でも、当人の庵野監督も多分自身の掌では収まりきれない程大きくなった作品の落とし所は「正直どうしたら良いのか解らない」と言う時期があったのではないかと思うんですよね。
以前、お仕事で一緒になったエヴァのTV版の演出を担当された方からも“もしかしたら、もうまとめられないかも知れないよ。それぐらい製作者の手を離れすぎてエヴァと言う作品は膨らみ過ぎている”と言う話を聞いたことがあります。
「哲学」ではなく「衒学」。
なんとなくその言葉を思い出し、この衒学と言う言葉がキーワードなのだと感じたりします。
TV版の放送からエヴァは、その難解な展開からか制作スケジュールが押していた事もあり、庵野監督も第拾八話・第拾九話の時点でスケジュールが“行き詰るのが目に見えていた”と語っている。また「あれ(このような物語の終わらせ方)が僕のサービスなんです」とも語っていた。
また2006年6月の雑誌インタビューで、最終2話について、大月俊倫プロデューサーは「エヴァが現在あるのは、あの衝撃的な展開によって皆さんに『なにか違う』『俺ならこうする』とそれぞれ”補完”してもらえたおかげ。僕らにとってあの結末は肩透かしでも消化不良でもなく、長い時間をかけて”永遠に終わらない最終話”になれた唯一無二のクライマックスだと考えています。これが僕たちからの回答ですね」と答えている。
だからこそ、それぞれの答えがあって、納得出来ない部分も多数あるとしても、それはそれで良し。
『:||』の部分は、リピート記号が正式表記でありますがそれですら衒学の遊びにも思えるんですよね。
伏線や余白を残す事で哲学的な要素も含んでいるが、実は衒学で有ったり無かったり…それでも自身のライフワーク的な作品でありながら、何処か他人の手に委ねたいぐらいのワガママに育った作品でそろそろ嫁に出したいのに誰ももらってくれる人がいないみたいなw
でも、立派に送り出せたのではないかなと思います。
ちょっと難点と言うか、気になった点はエンドロールに制作スタッフにガイナックスの文字が見当たらなかった事…(一応チェックしたけど確認出来なかった)
ここ数年のガイナックスの没落と安野監督との関係を知ると仕方無しではありますが、ちょっと気になりました。
これだけ長く付き合った作品になるとは思わなかったし、それでもいろんな思い出が有り過ぎて、それぞれのキャラクターには思い入れが沢山。
今までが不幸な結末が多いので出てくるキャラクターには“出来るだけ幸せな結末であって欲しいなぁ”と思うんですよね。
テレビシリーズから約四半世紀。旧劇場版から23年。
新劇場版の「序」から14年。
最初は住んでいた地域でテレビシリーズの放送がやってなくて、ビデオで後追いで追いかけて見てましたがそれでも解んない所が多数。
全てを理解も出来ないままに旧劇場版を鑑賞しても更にちんぷんかんぷん。正直一時期は嫌いな作品でしたw
その後パチンコでエヴァが出てくるとも思わなかったし、そのエヴァパチが大ヒットして、今も続くシリーズになると思わなかったw
そんなエヴァが再構成で新劇場版で上映させるのなんて青天の霹靂状態。でも正直嬉しかった。
自分の中で長い時間を掛けて咀嚼出来、その栄養素の有り難さが分かった時点でまたエヴァを咀嚼する。この工程がこの作品の意図でもあると解釈し、あえてその流れに乗っかる。それで良いのではないかなと思います。
ラストに近づくにつれ、物語のクライマックスの感動を噛み締めながら、この作品との長い長い付き合いが終わる事に万感の思いが込み上げてきて、涙が込み上げてきました。
今はこの作品をリアルタイムで観れたことが嬉しくて感謝。こんなに作品の余韻に浸れると思わなかったし、それが嬉しい。
また、新しいエヴァが生まれるかもしれないし、そうじゃないのかも知れない。
それならそれで良い。そうなったらそうなったで素直に受け入れようと思う。
そんな感じがするんですよね。
アニメーション映画作品に想いを寄せ過ぎる事は無いんですが、その思いに沿えた事も嬉しい。
今は登場した全てのキャラクターに、作品に関わった全ての人に「お疲れ様でした」「改めて今まで有難うございました」と言う思いで一杯です。
IMAXなんかで再度観てみたい気持ちもありますが、今はゆっくりと余韻に浸りたいと思います。
補足
3月22日の午後7時30分からNHK総合で放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル」を見ました。
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の制作の舞台裏を4年間にわたって独占密着した内容で宮崎駿さんが仰られてた「庵野は血を流して映画を作る」の意味が十二分に理解でき、この番組を見て府に落ちたところが多数。
映画を観て理解がしずらかった点や難しかった点が補足や補填されたと言うかなり見応えのある番組でしたが、良く考えると監督の考えや人となりが取材番組で分かると言うのはよくありますが映画作品の理解の補足をされる取材番組ってかなり稀有ですよねw
でも、庵野監督のこの作品にかける執念の様な思いが少しでも知れた事で、やっぱりこの作品と同じ時を過ごせた事が改めて嬉しくなりました♪
追記!
1度の鑑賞で分からなかった部分もいろんな情報が入った上で2回目の鑑賞でなら理解出来る部分も増えるかな?と思い、IMAXでの再上映の情報を聞き、IMAXで再鑑賞しました。
前作では映像の情報を読み取る事にいっぱいいっぱいだったので、今回は割りと理解と把握を出来ました。
やっぱり2回観ないと分かんない事が沢山で、それ以上に再発見やうろ覚えだった事も再認識出来て満足♪
それでもマリの存在と立ち位置は現実とのリンクでの説明はついても、物語の中ではやっぱり説明が難しいw
でも、儀式の様に始まる前の緊張感と万感の想いがこみ上げる感動はやっぱり観て良かった!
でも、何度も観て、その感動を薄れさせたくないなぁ~と言う思いも改めて認識。
この思いだけでお腹一杯なので、当分は観たくないかとw
いろんな意味で「さよなら!そして有難う!!エヴァンゲリオン」な思いを堪能出来ました。