「エヴァンゲリヲンにみる思春期課題」シン・エヴァンゲリオン劇場版 botani calさんの映画レビュー(感想・評価)
エヴァンゲリヲンにみる思春期課題
エヴァンゲリヲンの考察で1番よく目にするのが人類補完計画に関する考察だ。しかし、この作品を考察するにあたって人類補完計画の内容に対する理解は必要ない。なぜならば、人類補完はシンジ(思春期の少年)に対する大人の理解できない事情の押し付けの具体例であり、作成陣も意図して説明していないからである。
この作品の理解にあたって最も重要なことは命題を理解することである。エヴァンゲリヲンの命題は子供たち(シンジ、レイ、アスカ)の思春期課題の描写だ。
シンジは3歳で母親を亡くし、同時に父親にも捨てられる。自尊感情が低く、他人と関わり傷つくことを恐れる。序では父親ゲンドウに愛情を求めるが拒否され、ゲンドウを恐れるようになる。破では同級生たち、親代わりのミサトとの交流で克服しかけたが、失敗(ニアサード)をする事で塞ぎ込んでしまう。Qのシンジは再び自分の殻に籠り、人と目線を合わせずに拒絶することによって自己防衛する。
しかし、シンエヴァンゲリヲンで再び同級生と交流することで立ち直ことでQでは気づかなかったミサトの優しさに気づく。
「何でそんなに優しいんだよ」
そして、恐怖の対象だったゲンドウと対話し、アニメ版、旧劇ではない新たなエヴァの無い世界(現実)を選んだ。
エヴァンゲリヲンの中でシンジは親に対し反抗する子供、レイは自己表現ができない子供、アスカは早く大人になろうとする子供として描写されている。同じように、大人たちもミサトはファザコン、ゲンドウには子供と向き合えなかった弱さなど、主要な登場人物には心理的課題がある。シンエヴァンゲリヲンは漫画から新劇に描いてきた登場人物たちの課題を解決するための映画だと感じた。
まとめるのが難しそうなのでここで終わりますが、追手門学院大学の新世紀エヴァンゲリオンにみる思春期課題と精神障害というレポートに詳しく書いてあったので興味がある方は是非一読。
https://www.otemon.ac.jp/var/rev0/0000/5482/center08_mizobe.pdf