「さようなら」シン・エヴァンゲリオン劇場版 ナンダバナオタさんの映画レビュー(感想・評価)
さようなら
TV版から四半世紀愛された物語に綺麗に決着をつけてくれました。
前半「そっくりさん」が人に触れ、体験を通して初めて湧く感情を学ぶ様子は微笑ましい。
歳月が過ぎ、気づけば世界が変化し取り巻く人物や、かつての同級生が大人になり今を生きる中、浦島太郎よろしくQを引き摺り引き籠るシンジが対照的に描かれました。
トウジの「元気そうでよかったよ」の一言やケンスケの「今はそれでいいよ」なんて歳を取っても変わらない友情と、友人を迎え入れる大人な優しい言葉。
周りの変化に気づき受け入れる事ができたシンジは大人として歩き始めます。
シンジがアスカの問いに自分なりに答え、「ガキ」から成長したシンジをアスカは認める言葉とともにあのころは好きだった、なんて口にするのも大人になったアスカだからこそ。
皆、色んな事があるけれどなんとか折り合いをつけながら生きています。
皆が例外なく『あの頃』から歳をとりました。登場人物も製作陣も私達視聴者も。現実世界も様々な進化があり一部のプロットは今や古くささえ感じるような何月が経ちました。
エヴァの呪縛から解放され今を現実を生きるための、手を差し伸べてくれているような大人の思いやりを終始感じました。
あれはああだ、これはこうだという今までのエヴァ視聴後の考察に盛り上がるような内容とは違って、あぁやっと本当に終われたね、と感じました。
最後までぐずぐず『あの頃』を続けていたゲンドウもシンジに気付かされました。シンジのようにゲンドウのように気付く事ができればこの作品は私達に対し呪縛からの脱却や大人になる事への助けになります。
それを飲み込めずにいると今作を見る前のシンジのままでいる事になるのでしょうか?
心を閉ざしたままだと持てるはずの希望すら持てぬままかもしれません。
作中の人物達のように、この作品は私達ファンを突き放すのではなく私達に手を差し伸べてくれました。今日からまた、現実を生きて行く事を後押ししてくれたように思います。