「0に限りなく近づく=∞(無限大!)」シン・エヴァンゲリオン劇場版 ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
0に限りなく近づく=∞(無限大!)
結論から言うと大傑作でした!
もちろん、期待していたのは初号機の大活躍と、レイとアスカのヒロイン対決ですが、そんな期待がある意味見透かされたかのようなプロレス展開とヒロインのチョイスに、やられたと思いました。
「運命を仕組まれた子供達」って「決められた役割を演じるキャラクター」にそのまま置き換えられて、アスカ、レイ、カヲルが、アスカ、レイ、カヲルというキャラクターから、そして舞台装置としてのエヴァの世界から解放されていくシーンを観て、これはTVシリーズでも出来なかったことをしていると思いました。シンエヴァは予想のはるか先を行っていました。
ヒロインにマリが選ばれたのも、アスカでもレイでもない別の女の子ということでしょう。「だ〜れだ?」と目隠しして聞いてくるのもそういったことを意識させられる。
ラストはもはやみんなの希望を集めた元気玉!ならぬ元気の槍で、シンジママが美味しいところを全部持っていくというすごい展開になっていました。
TVシリーズ、旧劇場版は当時小学生だった私にはかなりの衝撃でした。
グロテスクな描写ももちろんそうですが、夕方の不気味さや、1人残される孤独感など、そっちの方が怖かった。
エヴァは他人に対する恐怖としてATフィールドがありますが、本当の恐怖とは"孤独"なんだと思います。人を孤独にさせてはいけない。それは本作の前半の廃人シンジを救う場面でしっかり描かれていましたし、孤独に対する恐怖がゲンドウを生み出したと言っても良いと思います。この二人の対立構造が映画の中で徹底して演出されていて完成度の高い作品でした。
私は本作を観るまでは新劇場版「序」、「破」、「Q」は暖かく見守りつつも、「やっぱりTVシリーズがよかったなぁ・・・」なんて愚痴を溢していましたが、本作を観て、成長したキャラクターを観て、寂しいけど、エヴァという時代は終わり、今を生きる!これからが本当の新世紀!というアツいメッセージとして私は受け取りました。
素晴らしい作品で時代を作ってくれてありがとうございました!
追記:私はアスカが好きでしたが、シンジの口から(恐らくゲーム版を除いたエヴァ作品で初めて?)好意があったと告げられたことだけで大満足です
追記2:オープニングクレジットの壮大なオーケストラの曲はIMAXではものすごい迫力で鳥肌が立ちました。鷺巣詩郎の楽曲でライナーノーツがHPで公開されていますが、ワルシャワ国立フィルの総勢104人の巨大編成で録音を行ったとのこと!!めっちゃ気合い入ってる!(笑)旋律はゴッド・ファーザー2のThe Immigrant を彷彿とさせる感じでしたが、やはりニーノ・ロータにオマージュを捧げた曲だとライナーノーツに書いてありました。ヨーロッパに始まり、ヨーロッパの名画を彩った巨匠を彷彿とさせる壮大な曲で幕を開けるシン・エヴァンゲリオン劇場版。
ゴッド・ファーザー2は父と子がそろぞれの時代で、一方は家族を築き上げ、もう一方は家族を失っていくという父子の対比話でした。不思議とシンエヴァの話にもリンクしていて面白いと思いました。意図的か偶然か私の思い込みか。いずれにせよ、素晴らしい映画に素晴らしい音楽ありです。
追記3:公開から1週間が経ち、色んな人の考察や感想を読みました。やはり色んな人にそれぞれのエヴァがある。エヴァ・インフィニティとは私達のことだったんだと思います。そして、本作で全てのエヴァに碇シンジの口から「さようなら」と告げたんです。
さて、本作における「さようなら」とはどう言った意味だったでしょうか。