「庵野秀明の星の王子様」シン・エヴァンゲリオン劇場版 よしおさんの映画レビュー(感想・評価)
庵野秀明の星の王子様
テレビアニメシリーズから26年
エヴァの呪いにかけられた
我々チルドレンたちを現実へと還す作品。
庵野の最後のフィフスインパクトは
劇中劇であることを直接的に暗示する。
順を追ってキャラクターを弔うシンジ
あとは君だけだと告げるカット割は
明らかに我々に向けてのセリフではないか。
Qで観客とシンジを同じ状況に置き
感情移入の対象とさせたことから
今作の導入は非常にスムーズだった。
最初はシンジと同じ目線で感情移入していた我々も
最後は子を持つ親の気持ちでシンジを見ていたのではないだろうか?
自分だけじゃなく、他人の弱さをも受け入れることで
限りなく人を愛するということに気づいたシンジ。
ここで観客の体現としてエヴァの呪いを浄化される役目は
父親のゲンドウにスイッチする。
この辺りのヒッチコックよろしくばりの古典的な
映画手法を使って次第にアニメ的表現を逆手に取った
演出の数々で我々の呪いを浄化していった。
この作品の根底にあるのは庵野秀明自身の成長ではないだろうか
彼自身が心の闇を全て晒したテレビアニメシリーズから
エヴァの呪いを撒き散らし、それに縛られてきた人生の中で
もがき苦しみながらも支えてくれる人々(風立ちぬの宮崎駿や、安モヨコ)の出会いから温かみを知ったように思う。
その温かさを持って自分のケジメ、シンジが言うには落し前をつけたのだろう。
いい意味で今後エヴァが昔よりも語られることは
なくなるのではないだろうか
考察のようなブログも、書籍も時代とともに
なくなっていくだろう
エヴァの呪いの浄化、それが庵野秀明の望みだろう
しかし浄化とともに我々に新たな呪いをかけた
それは「君たちも今を生きよう」と言うこと
いつまでもアニメを見ていないで
現実の世界と言う最も劇的な世界で生きていけと
そして庵野秀明はエヴァから去る
でも大丈夫、これは悲しいことではない
いつまでもエヴァは心の中に残っている
冒頭とエンディングの真っ暗闇の中に光る星星は
星の王子様が最後に旅立つ前に主人公に告げる台詞の
再現ではないだろうか。
長々と書き連ねたが
私が今後エヴァを見返すことは無いだろう
現実をしっかりと生きていかねばならないから
それでも挫けそうな時、きっと日常の中に
シンジとマリの姿を思い浮かべてしまうだろう
それで良いと思っている
そうして時々思い出せるのならそれでいいのだから