「泣きました(ネタバレあります)」シン・エヴァンゲリオン劇場版 Ankkoさんの映画レビュー(感想・評価)
泣きました(ネタバレあります)
ネタバレあり
かつてリアルタイムで10代だった私達にシンジ達がようやく追いついてくれました。
まさかエヴァで泣く日が来るとは。
真っ赤に染まったパリから始まるシンエヴァ。いつもの通り空白の何年間から始まると思って居たのにきちんと続編として始まった事に驚き。この辺は普通にエヴァンゲリオンしてます。
そして3人が汚染された街を歩いていくシーンへと移ります。ここで珍しくOPとしてスタッフや監督の名前が出ます。これはエヴァンゲリオンシリーズとしてはかなり珍しい。が、いよいよラストなのだな、と思いました。
ただ歩いてる3人。特にセリフもありませんが仮称アヤナミレイの仕草がテレビシリーズとも序破ともやはり違い、そうだ。このアヤナミは綾波じゃないんだった、と思い出させてくれます。
そしてQで死んだと思わされていたトウジの登場。Qでは分かりづらかった空白の間をここできちんと視聴者側がついてこれるように間を取ってくれている。言葉で説明されるよりも分かりやすく、後の続くアスカのセリフやQでのアスカの態度も説明がつくようになっています。
これまではアスカは私、私、私!と自己主張が激しく表面上は自己中心的に見えるキャラですが、承認欲求が強いというキャラ。それが満たされたのが分かるのがアスカがここから相田ケンスケの家で過ごす数日間、自分の事ではなくケンケンはケンケンはと自分の事よりも彼を優先します。これはアスカの中での優先順位が異なったのでしょう。そして決定的なのが私は守るために居るのだというようなセリフ。
今までのアスカならば守るのではなく勝利もしくはエリートで居るため、つまり自己承認欲を満たすためでした。それが大事な人(存在)、自己を認めてくれる相手が出来た事で大きく成長したという事だと思いました。
そして物語は大きく完結へと進みます。アヤナミレイから綾波を超えて本当により人間に近づいた人造人間としての綾波レイ。そんなレイとユイが似ても似つかない存在になり孤独が増すゲンドウの心の内。
カヲルが何度も何度も同じ演者を繰り返しその内にシンジを自己のストーリーに加えたという事実。司令と呼ばれゲンドウと同じ服を着てあの机に座るカヲル。
親がしでかした事の後始末をしていったミサト。そして同じように後始末をしようとしたシンジ。
かつてミサトは自分とシンジを重ねて見ていたと吐露しますが、知らずの内に重ねていたのはむしろシンジだったのではないでしょうか。
セカンドインパクトではミサトは自身の父が代わりになり守られ、けれど守りきれずにその役目はかつて父の姿を見ていた加持へ。セカンドで父を失い、サードで加持、そしてフォースではミサトが。
劇中で大きく語られる事はありませんが、なぜミサトはミサトと加持の子供で加持リョウジとシンジがツーショット写る写真を見ていたのか。あれはケンスケが送った映像から切り抜いたかケンスケがミサトに送った物です。加持リョウジだけの写真ならばケンスケがシンジを加持リョウジに紹介する前に用意出来たはずです。
ミサトはシンジを自分の子供のように思っていたのでは無いか。かつての恋人であり子供も父である加持へ対する愛とは違う親に近い愛情であったのではないかと思いました。
そしてシンジはユイに守られ、海岸へ。ミサトというもう1人の親が用意した槍を使って世界を再構築するために。
そのシーン線画、絵コンテに変わる段階は文字通り槍で世界を描き直しているのを表しているのだと思います、シンジが。
それを破るように現れるマリ。あの屋上でぶつかって来た時と同じように空から。間に合ってよかったと、マリは言います。恐らくマリはアスカがしたように人を超えた存在なのでしょう。マリはかつて人を超えた使徒の力を見せると言ってビーストモードを使います。ですからマリの存在ならば置いてけぼりになる可能性もあったのかなと思いました。
一人一人が幸せになるその瞬間へ送られ、そして大人になったシンジ。今までの出来事がほんの数分のうたた寝の間に見た浅い夢の中のように感じますが、首にはまっているチョーカーとその後に現れるマリが夢ではなく、現実で、しかし使徒やエヴァの居ない世界を時間を巻き戻すことなく、むしろ、彼らが過ごすべきだった本来時間軸へシンジがきちんと作り直し描き直した事を示しています。
初日に2度観る機会を得ましたが2回目の方が号泣しました。今までのエヴァンゲリオンが遠回しにメッセージを送っていたのだとすれば、これはド直球です。ネタバレされたとしてもエヴァンゲリオンが好きならば観る価値があると思います。全ての謎が解明されるわけでも全てが説明されるわけでもありません。
けれどエヴァンゲリオンが好きならば嗚呼エヴァンゲリオンとしてきちんと終わってくれたと納得出来ると思います。
25年、待って本当によかった。
全てのエヴァンゲリオンに感謝を。
そしてさようなら。
庵野監督をはじめ関係者のみなさま、おめでとう。