「エヴァ物語の終焉」シン・エヴァンゲリオン劇場版 どらキードラドラさんの映画レビュー(感想・評価)
エヴァ物語の終焉
思い返せば20余り年前に始めてアニメでエヴァと出会ってから20年。本日ようやくエヴァンゲリオンが幕を下ろした。大学生の若かった自分は親子関係や恋愛、友人関係をシンジたちに投影して夜を明かした。そして今社会人になり結婚し子供も授かり、大人になったシンジや当時解らなかったゲンドウの胸の内に共感を覚えることになるとはあの頃は思いもしなかった。
図らずもリリスに遭遇してしまいファーストインパクトを被災した全人類、その力を権力として取り込んでリリスによる人類支配を目論むネルフ、その中で最愛の妻を事故で失い喪失のなかで救済を求めるゲンドウ。ゲンドウの苗床はエヴァの力を起点としたリリスとリリンの消滅と存在の同質化。そのために仕組まれた人造人間アスカ、アヤナミ。何も知らず育ったシンジ。ユイの力が宿るエヴァ初号機によって救済されるゲンドウ。結果的に救われる世界。リリス消失をもって消え去るエヴァ。人間でありながら自らを犠牲にしたカジ夫妻。全てを乗り越えて成長したシンジ。新世紀のはじまり。
洪水のような思い出や伏線の数々があり、書ききれない。最後まで残った謎は、リリスの始祖やネルフの経典の発祥だがいつか回収されるときが来るのだろうか。
シンジの成長は清々しいものであったが、ナギサとの死別、レイとの死別、父親との死別を乗り越えて果たして彼はどのような成長を遂げてしまったのだろうか。人間の逞しさだけでは説明しきれない矛盾を孕んでいると感じた。歳を取らない彼らをトウジたちはどのような思いで見守っていたのか。
映像作品としても3Gやポリゴン、手書きやデジタル、実写など挑戦的な表現が多くて飽きることがなかった。ラストのラフスケッチの件はよくわからなかったが。
よくある親子の葛藤や幸せとは、といったテーマを超えたスペクタクル。
初日に観てよかった。
製作者の皆さまに感謝。