「ありがとう、全てのエヴァンゲリオンと庵野監督。」シン・エヴァンゲリオン劇場版 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ありがとう、全てのエヴァンゲリオンと庵野監督。
『新世紀エヴァンゲリオン』がTVで初めて放送されたのが、1995年。
再構築された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』が始まったのが、2007年。
前作『Q』が2012年。
色々諸事情あり、9年。さらに、コロナで2度の公開延期…。
近年の邦画でこれほど公開が待望された作品もそうないだろう。(ま、興味無い人も居るだろうけど)
しかし!遂に!やっと!
時が来た。
久々にこの言葉を使おう。
ネタバレ厳禁。
久々にこの言葉も使おう。
率直な感想は…
昨年『TENET/テネット』を観た時、クリストファー・ノーランってスゲェ…と思ったが、いやいや、庵野監督はそれを上回る。
彷徨する心の苦悩、葛藤、空虚…。
昭和のような人情も。
バトルシーンでは一転、迫力!躍動!
恐ろしいまでの狂おしさ…。
そして荘厳な高みへ昇っていく…。
庵野監督のイマジネーションは未知や異次元どころではない、もはや神の領域。
全てをぶつけたような演出に、圧倒された。
『Q』のラストシーン。あの後3人がどうなるか、とにかく気になっていた。(あれから9年だもん。長かったなぁ…)
当てもなく荒廃した街を歩き続ける3人。
やがて、ある人物と会う…いや、再会と行っていい。本当に本当に、嬉しい再会。生き延びていてくれて良かった!
その人物と共に、ある場所へ。
暫くそこに滞在する事になるが、何だかこれまでの『エヴァ』で描かれた事無かったような温もりあるシーン。
しかし、シンジは…。
一方の“そっくりさん”は…。
前半はこのシーンの割合が多いが、シンジにとっては重要な部分。
中盤からは“決戦”。CGIを駆使したヴィレとネルフの艦隊戦はスッゲェ…。本当に日本は、アニメならハリウッドにも勝る。
そしていよいよクライマックスへ。『シン・エヴァ』は我々の予想も付かない、想像も凌駕する展開へとなっていく…。(←もうホント、これだけしか言えません!(>_<))
見てて感じたのは、今回の『シン・エヴァ』は、庵野監督のこの9年間の心情、体験、身の回りで起きた事が反映されてるような気がした。
『Q』で目の前で唯一心を許した友を亡くしたシンジ。あまりのショックに完全に心を塞ぎ込む。生きるのも、死ぬのも…。
『序』『破』『Q』と再び『エヴァ』を再構築した庵野監督。が、のめり込むあまり、『エヴァ』の呪縛に囚われ、映画も作れないほど重い鬱に。
塞ぎ込むシンジに手を差し伸べる周りの友人たち。
「どうして皆、優しくしてくれるんだ?」
これは鬱を経験した庵野監督だから言える言葉だろう。
手を差し伸べる“おまじない”があって、シンジは少しずつ立ち直る。
庵野監督も鬱を克服していった。
本作で描かれていたシンジは、庵野監督自身だったのかもしれない。
あのまま全てを捨てて穏やかに過ごしてもいい。
でも人には、けじめややらなければやらぬ事、抗えぬ運命がある。
庵野監督も再び映画の現場へ。監督曰く『シン・ゴジラ』に救われ、そして『シン・エヴァ』と全力勝負。
大人の傲慢、都合、振り回され続け、あのショッキングな出来事から今度こそもう二度とエヴァには乗らないと思ったシンジ。
が、結局選ぶは、自分の意志。
シンジがエヴァに乗る時、いつも必ずそうだった。
不条理とエゴと混沌に満ち溢れた世界。
その世界に駄々を捏ねているのは、てっきりシンジの方だと思っていた。…本作を見るまでは。
違った。
大人になれ。かつてそう言われたが、最もそう言われるべき人物がいた。しかも、その言葉が人物に。
言わずとも分かるだろう。
父、ゲンドウ。
ゲンドウがこの恐るべき力、恐るべき計画を始めた理由…。
これも言わずとも分かるだろう。
妻ユイに会いたいが為に。
神の力、万物の理、全てをひっくり返し、抗ってまでも。
ヒトが神の領域を超えようとする恐ろしいまでの姿。
…しかし、別の見方をすれば、未だ妻の死を受け入れられない哀れな男。
厳格で冷徹な男…に思えたが、実は、あまりにも愛する者がいなければ生きていけないほど孤独。
ずっと駄々を捏ねている子供。
そんな父に、息子が声を掛ける。
父はようやく気付く。
自分の欲やエゴに没頭するあまり、気付かなかったのだ。愛する者がもう一人、すぐ傍に居た事が。
『エヴァンゲリオン』はある父と息子、家族の物語だったのかもしれない。
“完結編”だが、今回も賛否両論は必至だろう。
でも、それで良し。それが『エヴァンゲリオン』。受け止め方は人それぞれ。
碇家のドラマとしてもなかなか感動的だったし、ミサトたち、アスカ、カヲル、レイ、そしてエヴァ…皆の思いが昇華していくーーー。
ラストシーンの意外過ぎるカップリングには驚いたが、以前の劇場版よりかはスッキリ。自分的には気持ちのいい終わり方だったと思う。
思えば、高校生の時初めて『エヴァ』を見て、そして今こうして見届けて、自分の人生に『エヴァ』の印はしっかり刻まれたんだなぁ…と。
“さらば、エヴァンゲリオン”なんて宣伝で云われているが、自分にとっては“さらば”じゃない。
ありがとう、エヴァンゲリオン。
ありがとう、庵野監督。
これからも。
> 暫くそこに滞在する事になるが、何だかこれまでの『エヴァ』で描かれた事無かったような温もりあるシーン
なるほど。大切な部分だったんてすね。
そして、素晴らしいレビューをありがとうございました。そうですね、父ゲンドウ、たしかにその通り。そしてもう一人そばにいたのはシンジ。いや、たしかに。素晴らしい。ナイスレビュー!!!
めっちゃレビュー見て泣いてしまった
そうだ、たしかに監督のことかもしれないし
そのシンクロ率があったからこその良い出来だったのかもしれない。
このレビューに会えてよかったです。
いつも内容の濃いレビューに感服しております
おまじないって自己暗示の隠喩だったように感じました
有名なセリフ 逃げちゃダメだ の連呼と繋がっていたように思います
横槍失礼致しました
ついついコメントしちゃいたくなる魅力的なレビューだったもんで
(❁´ω`❁)アリガトウゴザイマシタ