The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛のレビュー・感想・評価
全13件を表示
人として、必ず観て欲しい。愛という深い深い意味に溢れる涙が止まらないでしょう。
ずっと観に行きたかった作品。初めてだった、退館してプログラム買う時も涙がどうしても止まらなくて売店の女性に不可思議な顔されたのは。日本人1人1人が当たり前に毎日享受している「民主主義」のかけがえない尊さを心から感じて涙が止まらなかった。実話だからこそ心にグサッと突刺さる最高のラブストーリーでもある。内容は語りません、でも映画好きな人ならば必ず、映画好きでない人も1人でもいい、必ず観に行ってほしい・・・。
人として、必ず観て欲しい。愛という深い深い意味に溢れる涙が止まらないでしょう。
貫いた自由と信念と愛
ビルマ(現ミャンマー)を軍事独裁政権の圧政から民主化へ導いたアウンサンスーチー。
ノーベル平和賞、幾度もの自宅軟禁など日本でもつい最近まで度々ニュースで取り上げられ、何をしたどんな人かは大まかには知ってはいたが、改めてじっくりと知るには実にちょうど良い作品であった。
父はビルマに命を捧げた英雄。だから娘もずっと政治の中心に居続けたと思いきや、そうではなかった。
イギリスで暮らし、妻であり母であった。
母の看病の為、故郷へ。
国民からすれば、英雄の娘が帰ってきた。期待するのも無理はない。
しかし当の本人からすれば、自分に父と同じような事が出来るのか。政治経験も無く、長らく外国で暮らし、一介の妻で母である自分が。
が、祖国に戻ってこの目で見た祖国の苦しみ。
祖国を愛する気持ちは自分も同じ。
父は祖国に命すら捧げたのだ。
殉教者になれという訳ではない。
父は祖国の為に尽力した。ならば自分も…。
アウンサンスーチーは非暴力を貫く。
彼女の父は暗殺されたが、暴力に暴力で対したら、殺し合いになってしまう。
暴力に対する最大の戦いは、非暴力。
争いの火種である悲しみ、憎しみ、怒りに非暴力で打ち勝て。
それと対比するような軍事独裁政権。
赤いスカーフは殺す権利がある印だ、と軍人。
現将軍は非情にも配下の者を殺す。
こんな普通ではない世界が、ほんの遠くない過去に、ほんの遠くない国で起きていたのだ。
意表を突かれたのは、監督と主演。
監督がリュック・ベッソンなのが公開時から驚いていた。
最近、監督作も脚本作も生温い作品続くが、間違いなく近作ではベストワーク。
さすがにアウンサンスーチーの長い戦いを2時間強に収めるには無理があり所々ダイジェスト的で、軍事独裁政権もちょっとB級チックな悪役描写だが、サスペンスも織り込み、熱と力がこもった演出。
ベッソンは強い女性を描く事が多い。だから案外本作は意外でもないのかもしれない。
ミシェル・ヨーがアウンサンスーチーを熱演。
ミシェル・ヨーと言うとどうしてもアジアを代表するアクション女優としてのイメージが強いが、アウンサンスーチーの内面の強さ、凛とした魅力、一人の女性としての弱さをも体現。
アクション女優としてではなく、人間的な芯の強さを溢れさせ、ミシェル・ヨーのキャスティングもまた意外ではない。
夫役デヴィッド・シューリスの好助演も忘れてはいけない。
国の指導者となる妻を、全力でサポート。傍に居る時も、離れている時も。
ふと思ったのは、妻の志を否定するシーンと無い。
いや、全く無かったという事はあるまい。何処の世界に、妻を危険な渦中へ放り出す夫が居るものか。
妻の事は勿論何より心配している。
そして誰より、妻の事を理解している。
それらを滲ませる好演。次いでに、双子の兄弟役で一人二役!
話は小難しい政治云々より、家族愛や夫婦愛を主軸に据えたのは良かったと思う。
アウンサンスーチーを苦しめる軍事独裁政権の圧力。
それを政治的弾圧で見せてもなかなかに伝わり難い。
多少メロドラマ的になっても、離れ離れにさせられる家族で見せた方が万人に伝わる。
長い軟禁生活。夫や子供たちに会う事すら出来ない。
つまりそれは、妻が居ない夫、母が居ない子供たちでもある。
やがて夫が病に冒されている事が分かる。
死の床であっても会う事は許されない。
選択を迫られる。家族か、祖国か。
喚き泣くアウンサンスーチーの姿は胸に迫る。
現在に至るアウンサンスーチーの活動に関しては詳しくはない。
調べると、アンチ派も少なくないようだ。
が、幾度の悲しみや苦しみを乗り越えた自由と信念は真のものだ。
Steel Orchid
サッチャーさんが鉄の女なら、アウンサンスーチーさんは鋼の蘭。彼女の志の強さは言うまでもなく、ご主人、息子さん達の苦労も大変なものだったことが伺えます。
将軍の娘という宿命だったのでしょうが、当初民主化運動を先導することに消極的だった彼女が、指導者として立ち上がるまでの過程と決心が省かれていた所だけ残念でした。
史実モノは事実の羅列で中途半端になりがちな印象があり、あまり期待していなかったのですが、映画作品としても気合いが入っていて良作だと思いました。
追記: 新政権発足おめでとう!
見ているうちにどちらが悪いかわからなくなった
スーチーさんのことは知っていたけど、あまり詳しくミャンマーのことを知らなかったので
ちょっとは理解できるかな、とみてみましたが…
あまり国の問題については理解できなかった
スーチーさんの家族のことはなんとなくわかりましたが
はじめは軍部の理不尽さにひどい!と思ってましたが
解放されたらすぐに集会をひらきだすスーチーさんを見て、
不思議なんですけど、どっちもどっちだな…って思ってしまいました
なんででしょうね
すごく美談仕立ての映画のはずなのに、心のそこからスーチーさんを支持できない
なんか過激な活動家っぽく見えてきて
テーマが家族愛のようですが、理不尽な状況に置かれてかわいそうだけど
結局は本人が選んだ選択なので、夫の死に目に会えないのは、あまり涙できなかったです
イギリスに帰れるチャンスはいくらでもあったと思うんですが…
あと、不安定な情勢なのに何度も何度も息子たちがミャンマーにやってくるのに違和感
イギリスで学校に通ってるだろうに、祖父が亡くなり父が家にいないからと、ミャンマーにやってくる描写がありましたが、
謎でした。なんなんでしょう。バカンス気分でミャンマーに?
息子たちはいい年齢にみえたけどまだ中学生とかだったのかな。
それにしても、わざわざその時期にミャンマーに来なくていいだろうに!って思ってしまいました
アウンサンスーチーと夫の過酷な愛の話
総合:80点 ( ストーリー:75点|キャスト:85点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:75点 )
色々と批判もあるノーベル平和賞だが、アウンサンスーチーは文句なしのそれにふさわしい受賞者だ。香港映画をはじめとして派手な活劇で魅せてくれていたミシェル・ヨーが、ここでは活劇封印で真面目に彼女の役を演じていて、見た目も含めてなかなか良い出来だった。またこれはアウンサンスーチーの民主化への政治闘争の話でもあるが、それ以上に家族の話でもある。夫のアリス博士役のデビッド・シューリスの出来がまたとても良くて、彼女を支えた彼の大きな貢献も見て取れた。
軍事政権の無茶な独裁の描き方も生々しかったし、常に緊迫感があった。だが何故彼女が殺されなかったかは理由が示されていたが、ミャンマーの民主化の過程についての描写は足りない。普通は独裁政権は選挙などやらないか、やっても独裁政権が圧勝したことになる名目だけの選挙になってしまうもの。何故これだけの独裁政権なのに選挙がしっかりと行われたのかについての理由が示されなかったのは残念。
あなたが政治を考えなくても、政治はあなたを考える
映画「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」
(リュック・ベッソン監督)から。
「事実に基づく物語」として観始めたが、私の勉強不足で、
ビルマの非暴力民主化運動指導者、アウンサンスーチーさんが、
どうしてこんなに国民に支持されたのか、やっとわかった。
彼女の父親がビルマ独立のために勇敢に戦い、銃弾に倒れた、
その前提を理解すると、疑問もすっきり解決された。
作品の中で「アウンサン将軍の娘」という単語も出で来るし、
彼女自身「私は父の血を引く娘です。
今、国で起きていることに無関心ではいられません」と言い切る。
さらに「昔、父が言ったように、最悪の心構えにして、
最高を望み続けます」と語ったシーンが印象に残る。
15年に及ぶ自宅軟禁は2010年に解除された彼女は、
軟禁されていた時、父親の教えを紙に書いて家中に貼る。
そして、ちょっぴり興味を示した軍の新人に、こう諭す。
「『あなたが政治を考えなくても、政治はあなたを考える』
私の父の言葉よ。その意味をよく考えてみて」と。
今や日本は、政治に無関心の国民が増えている、というが、
この台詞の意味を、もう一度、考えてみる必要がありそうだ。
題材からして高評価、マイナス点なしはさすが
これ以上ないと言える高素材の映画化。アウンサンスーチー。
どう切り取ってもドラマティックでおそらく多数の制作が映画化に名乗り出たに違いない。
監督にリュックベッソンというところにエンタメ的政治力が働いたのを感じる。
時間軸の飛ばし方、切り取り方には賛否あると思うが、二時間弱に収めた、ばっさりといっていい編集は評価出来ると思う。
撮る人が違ったらだらだら前後編もあり得たでしょう。
家族にフォーカスしたのは、多少なりとも本人側の意向を汲んでのことではないだろうか。思想家、政治活動家より、一人の女性として。
献身的な夫の『愛』の物語
ビルマ(現ミャンマー)民主化の指導者アウンサンスーチー氏の半生を描いた作品。主に、1988年のアウンサンスーチー氏がビルマ(現ミャンマー)に戻る事になった出来事から、1999年夫マイケル・アリス氏の死の辺りまでを描いている。(その後の、二回目の自宅軟禁以降はあまり描かれていない)
アウンサンスーチーと言う、あまりにも有名な存命する実在の人物をミシェル・ヨーが演じたわけですが、似てますねぇ。“完コピ”です。もちろん彼女は、元々ビルマ語は出来ないのだと思いますが、練習してビルマ語のセリフもこなしていました。
でもこれは、アウンサンスーチー氏の映画というより、彼女を遠くから支えた夫のマイケル・アリス氏(と、アレクサンダーとキムの二人の息子の)物語と言うべきだと思います。それほどまでに、これまで日本ではあまり知られていなかったマイケル氏の献身的な彼女への支持が描かれています。マイケル氏の支えがなかったら、アウンサンスーチー氏も、途中で心が折れていたと思います。
感動とか、感銘とか、そう言う言葉だけでは表しきれません。マイケル氏の『愛』に強く心打たれましたが、不思議と涙は湧きませんでした。いやぁ、本当にアウンサンスーチー氏、そしてマイケル氏は強い人ですね。
※アウンサンスーチー氏が、ビルマのミャンマーへの改称を認めていないことから、このPOSTでの表記もそれに合わせ“ビルマ(現ミャンマー)”と表記しました。
人の命が軽い……
「ミャンマーとは軍政によって変更された名称であって、我々の国はビルマである」…そういう思いが”ビルマ”という呼称に込められている。
政治的なことは避けたいという日本の気風があるのも事実ですが、作中でどうして”ビルマ”という呼称を使用しているのかについては、”歴史的に”で片付けるのではなく、これを見た皆に知っておいてもらういたいと思う。
どうして年齢指定?と思ったのですが、人がよく死ぬ。人の命が軽い。
いやおそらく、悲しむ間もなく人が次々死んで行く状況が実はリアルなのだろうと、そう思う次第。
物語自体は、ノーベル平和賞を受賞したアウンサンスーチー女史の伝記であって、それ自体は皆が知る所のもの。
ですが、この映画はそういった女史の業績よりも、夫婦愛・家族愛といった女史のプライベートに焦点を当てた物語。
どうしてノーベル賞を受賞したのかについてはあまり語られず、実際に独裁国家で軟禁にあった女史が何を考え、また、家族は何を思いどう行動したのか。
ただの偉人伝という事ではなく、皆に見て貰いたいと思える作品です。
民主化道半ばのかの国に、幸あらんことを。
アウンサン将軍の娘であること。
まずL・ベッソンが監督だということに驚き、
M・ヨーが入魂の役作りで完璧に演じていることに驚く。
実在の活動家、Aスーチーの壮絶な半生を描いたこの
ドラマは、ただ彼女の於かれていた現実を見るだけでも
価値ある物語なのに、実に分かり易く内面まで掘り下げ
重厚かつ本人に肉薄したドラマに仕上がっている。
恐るべし、ベッソン!こんな作品を撮りあげるとは…。
スーチーさんといえば、まずニュースで常に取り沙汰される
自宅軟禁の報道。15年という長きにわたり、軍事政権からの
横暴な圧力に非暴力で立ち向かい、いまなお現在進行形で
彼女は民主化に向け闘い続けている。そんな彼女の報道で
映される姿とは別に、今作は夫や息子との愛情秘話を描く。
英国留学ののちチベット研究家の夫と結婚、2児の母となり
幸せな生活を送っていたが、倒れた母の看病のために帰国した
ビルマで事態は急変。アウンサン将軍の娘帰国に民衆は熱狂、
民主化のリーダーとして彼女に一縷の望みを託すのだったが…。
スーチーさんの(父親から継いだ)偉大さもさることながら、
夫唱婦随で常に心で寄り添った夫・マイケルの存在が大きい。
この人を妻にすれば、いずれはこんな問題に直面する予感は
あったんじゃないだろうか。しかしこんなに長く夫婦が引き離され、
自分の死に目にすら逢えないとは、思いも依らなかっただろう。
長年にわたる自宅軟禁の中で、家族は何度かビルマを訪れる。
彼女がしていることは民主化を望む国民の為、それは家族も
承知とはいえ、いきなり普通の母親から民主化のリーダーとして
国外にも出られなくなってしまったのだ。夫がガンになり、
すぐにでも看病に戻りたい彼女に、来るな。君は国を出るな。と
必死に説得する夫の姿には涙が溢れた。これほど愛し合っている
夫婦が何の因果でこんな目に遭わなければならないのか…と思う
一方で、折れない強さを妻同様に夫も持っていることに感動する。
スーチーさんは、そんな家族や国民に支えられて、今あるのだ。
ひきかえ、旧軍事政権のバカさ加減にはまったく呆れ返る。
あんなバカ将軍が、よく国を治めるなんざできたものだ。
くだらない予言に頼り、運動家たちを惨殺し、彼女に圧力をかけ、
自分で自分の首を絞めているとしか思えない愚行に腹が立った。
父親であるアウンサン将軍は、いまの娘の勇姿をどう見ただろう。
多くを奪われ、大切な人をも失った彼女が、何としてでも手に
入れようとしているのは彼が掲げた目標であることを、父親は
誇りに思っているに違いない。The Ladyとは、名前で呼ぶことを
禁じられていた国民が、彼女を呼ぶときの敬称だったそうだ。
(着実に民主化に向け歩んでいるのが救い。スーチーさん頑張れ!)
なぜ彼女は支持されているのか?
家族愛については良く描かれている
しかし なぜアウンサンスーチーに国民的人気があるのかは
残念ながら伝わってこない
クリント・イーストウッドの「インビクタス 負けざる者たち」では
なぜマンデラにカリスマ的人気があるのかが良く理解できた
彼女の「非暴力主義」も2度目は通用しない
ショッキングだったのは将軍が
「(スーチーを)撃つな と言ったのはお前か?」
と言って将校の拳銃を取り上げると
「撃て」と言った将校を撃ち殺す
「彼女の父親は殺されて「殉教者」となった
彼女まで英雄にしてはならない」
と部下を戒めた場面
同じ人間とは思えない。。><
シナリオがいいです! ^-^
政治の話でもあるとはいえ、どこか、暖かい心で見られる作品です。
スーチーさんの髪の華飾りや映像が綺麗☆=
どなたの演技もしっかりとしているので、安心してみられます。
高潔で、知的な人が軸となっているあたりが、
好き嫌いはわかれるかもしれませんが、
エネルギッシュな人生というのは、やはりすがすがしいです。
とても真似できる人生ではないけれど、
旦那さまへの愛や、家庭への愛、支持者の方への優しいまなざし。。
見習いたいです・・!
それから、(ここ大事??)旦那様の知的な支え合っての
スーチーさんだということが、タイトルどおりひしひしと感じられます。
ビルマに咲いた華、政治に興味のない方にも魅力的だと思います♪
気の遠くなるような民主化への遠い道
今年、国会議員に選出されたアウンサンスーチーは、24年ぶりにビルマ国外に出ることを許され、タイを皮切りにヨーロッパ諸国を訪問し、活発に外交を行っている。かつて戒厳令下のビルマでは、民主化運動が圧殺され 多くの活動家達や、軍政によって迫害された人々が、国境を越えてタイに逃れ、未だに難民キャンプに留まっている者も多い。自宅軟禁を解かれたアウンサンスーチーが 24年ぶりに自由に国外に出られるようになり、最初の訪問先、タイで、自国の人々に熱い言葉をかけて回る姿は感動的だった。
わずかではあるが、ビルマ軍事政権の民主化、アウンサンスーチーの国会への参加を認めるなどの動きに対して 米国政府は 長年にわたる金融制裁を解除、ビルマ駐米大使任命などの動きを見せている。オーストラリアも英国と共にEUの経済制裁を1年停止することに合意した。
しかし、ビルマの国会議員のほとんどは、制服軍人であり、立法司法行政すべてが軍が掌握している。国民会議の補欠選挙でアウンサンスーチーは議席を確保したが、民主化への道のりは、いまだ遠い。
原題:「THE LADY」
監督:リック べッソン
キャスト
アウンサンスーチー:ミッシェル ヤオ
マイケル アリス :デヴィッド シューリス
この映画は、英国人の夫と二人の息子とロンドンで暮らしていたアウンサンスーチーが 母親の病気見舞いのためにビルマに帰国する1988年から 夫と死に別れることになる1999年までの、彼女の家族に焦点を合わせた姿を映画化したもの。
ストーリーは
ビルマ独立運動を主導して、建国の父と慕われるアウンサン将軍が まだ幼い一人娘のスーに物語を語り聞かせているシーンから映画が始まる。
美しい湖に面した古い洋館。迎えの車がやってきて、将軍は娘を抱きしめて、仕事に出かけていく。そこで 将軍は反対勢力に暗殺されて、娘のもとには二度と戻っては来なかった。
その後、スーは イギリスでオックスフォード大学で学び、チベット研究者マイケル アリスと結婚、ロンドンで二人の息子達と暮らしていた。しかし、1988年4月、ラングーンに住む母親が病に倒れたという知らせが入り、急遽スーは母親の見舞いのために帰国する。家族には1週間で戻ると言い残してきたが、そのまま二度とスーは、ロンドンの自宅に戻ることは出来なくなった。
この年、1988年は、学生を中心に反政府、民主化運動が盛り上がってきた時だった。スーは、母親が入院している病院で、軍と衝突して傷つき病院に収容された学生達が、片端から連れ去られて虐殺される様子を目撃する。武器を持たずにデモをする無防備の学生達が、武器を持った軍人達に無造作に殺されていく。軍政府は 暗殺された将軍の娘スーの動きをスパイし、彼女が活動家達と接触するのを警戒していた。しかしスーには、殺されていく学生たちを目撃して、すでに選択の余地はなかった。病院から退院した母親を連れて、自宅に戻るとスーの家には 活動家達が続々と集まるようになる。とうとう家は、民主化運動の事務局の様になってしまった。活動家達が望むように、ビルマ独立の父アウンサン将軍の娘スーが 民主化運動の代表者になるのは自然の成り行きだった。
同年7月、軍事クーデターにより独裁政権を布いていたネ ウィン将軍が辞任するに伴い、大規模な民主化運動が広がり、スーは、50万人の聴衆に向かって民主化を進める決意を表明する。夫も二人の子供達も駆けつけて、スーを応援する。しかし9月には国軍が再びクーデターを起こし、ソウ マウンを議長とする軍政権が誕生、民主化運動は徹底して弾圧される。スーの夫や息子達は国外排除され、活動家たち、数千人が虐殺されて犠牲となる。
スーは1990年に予定されている総選挙に出場するため 国民民主連盟を結党、全国遊説をはじめたところで 1989年7月、軍政権によって自宅軟禁された。1990年5月の総選挙では、国民民主連盟が圧勝した。にも関わらず軍事政権は、スーの自宅軟禁は解かなかった。夫と息子達は 幾度も幾度もビルマ入国を申請するが許可されず、夫も息子達もスーに会うことが出来なくなった。電話も、軍事政権の妨害電波のために、思うように家族で話しをすることも出来なくなる。
そんな中で1991年ノーベル平和賞が授与されることになった。国外に出ることのできないスーの代わりに、夫と二人の息子が授与式に出席、長男のアレックスが受賞の挨拶をする。スーは自宅軟禁されて、仲間とも家族とも連絡不通になっている中でノーべル賞受賞の様子をテレビで見ようとすると 軍は停電の嫌がらせをする。玄関先に軍人が立って、監視し、スーは徹底的に孤立させられる。
ビルマ入国を要求する夫の申請を、軍は繰り返し却下し、1999年、夫は遂に前立腺癌で亡くなる。死の直前まで 夫のか細い声とスーの声を繋ぐ電話線は妨害を繰り返される。弱弱しい夫の声にスーはとうとう居たたまれなくなって「わたし帰ろうかしら。」と問う。いったんスーがイギリスに帰れば二度とビルマに入国できない。ビルマの民主化運動の火は消えてしまう。夫は気丈に最後まで、「僕は大丈夫、君はビルマから出てはいけない。」と言い続けて 遂にホスピスで亡くなる。
2007年9月、仏教僧侶達が立ち上がる。国会にむかう道を何百何千という僧侶達が埋め尽くす。人々が拍手をしながら僧侶達のデモを守るように取り囲む。というシーンでこの映画は終わる。
しかし私達は、2007年の僧侶達の勇気ある反乱を事実として見てきた。素足 素手で軍に向かった僧侶達の抗議行動の激しさ。国民から尊敬され心の支えである僧侶達を、軍は軍靴で蹴散らし虐殺し、見せしめに僧侶の死骸を野にさらした。軍は寺を襲い、破壊の限りをつくした。累々たる僧侶の屍によって、民主化運動は再び圧殺された。
2009年5月には一人のアメリカ人が、スーの自宅に泳いで侵入したことで、スーの関わりある事ではなかったのに、自宅軟禁条件違反、国家転覆の罪状で、彼女は実刑を言い渡された。
このような、明らかな人権を蹂躙してきたビルマ軍事政権は 世界諸国から経済制裁を受け、孤立してきた。2011年6月 政府は遂にスーと話し合いの可能性を示し、政治活動を許可する。そして、2012年4月のビルマ議会補欠選挙に国民民主連盟から出馬して、議員に選出される。軍政のなかで、議員としてのスーにできることは何か。民主化への道は、いまだに、とても遠い。
映画では 中国人のスター、ミッシェル ヤオが、スーを演じた。顔が全然違うのに 映画を見ているうちにミッシェルが、スーの顔に見えてくる。何よりも、たたずまいがそっくり。さすが一流の女優だ。民衆に向かって演説する語調の確かさ。歩き方から顔つき、しぐさまで熱心に研究して、ビルマ語も習得し、スーのなまりまで完全にものにしたそうだ。
カンフーアクション映画では女剣士で飛んだり空中で相手と刀で切りあったりしたかと思うと、映画「さゆり」では、日本の芸者になりきって三味線を弾きながら長唄を歌っていた。役者として、ものすごく努力をする人。ミッシェル ヤオが演じて、とても良かった。また、夫役のデヴィッド シューリスが 素晴らしい名演で、泣かせてくれた。
むかし、ビルマの友達と話していて、無遠慮にミャンマーと言ってしまった時、彼女は、にこやかに、でも毅然として「ビルマと言って」と訂正してくれた。軍事政権が勝手にビルマの長い歴史を否定してミャンマーと国名まで変えてしまったのは ビルマの人々の総意ではない。彼ら軍は、未来都市のような近代的な人工首都まで作ってしまった。私達は誇り高いビルマの人々を尊重してミュンマーではなく、ビルマと言うべきなのだ。
楚々として美しいアウンサンスーチーの映画、とても良い。
全13件を表示