「ミア・ワシコウスカとマイケル・ファスベンダーのコンビは絶妙だが、やや単調」ジェーン・エア マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
ミア・ワシコウスカとマイケル・ファスベンダーのコンビは絶妙だが、やや単調
1943年のジョーン・フォンテイン、オーソン・ウェルズ主演作から数えて4度目の映画化である。
不変の愛を描きつつ、女性でもひとりの人間として自由で強くありたいジェーン・エアの人物像を浮き彫りにする作品だ。
キャスティングをみたとき、ミア・ワシコウスカはジェーン・エアの年齢に近いうえ、古い時代がよく似合う女優だ。また、出演作はどれも現実や運命に抗い自分らしく行動する少女を演じており、まさにジェーン・エアにぴったりだといえる。
そのジェーンが初めて愛するロチェスターは荘厳な風格はあるが、誰にも話せない秘密を持ち陰鬱で暗いものを背負っている。鬱屈したものを抱える男を演らせたら今もっとも上手いのがマイケル・ファスベンダーだ。
ソーンフィールド館での初対面のシーン。ぶっきらぼうな会話ながら互いの感性に惹かれていく様子は、まさにゴールデン・コンビの成せる一番の見どころといえる。
家政婦役のジュディ・デンチも相変わらず脇をしっかり固めている。
余談だが、少女時代のジェーンとロチェスターの被後見人(ジェーンの生徒)アデル、それに館の若い家政婦リアを加えた3人の顔がどことなく似ていること。たまたまそうなったのだろうが、この作品は、それでなくても従兄弟(従姉妹)だの兄妹が絡むので、つい親戚関係に見えてしまった。
描写で気になるのは、現在と少女時代を行き来する話の進め方はいいのだが、ジェーンがローウッド学院を出ていくカットがあまりに唐突で、一瞬、どういうシーンなのか理解できない。
原作を知っていれば、ジェーンが学院で数年教師を務め、教え子と別れを惜しんでいるのだと分かるだろうが、原作を知らない者にとっては頭のなかで端折られた部分を補完する必要があり、たとえ一瞬であれ、話の進行から離脱して現実に引き戻されてしまう。
もう一点、主要人物の台詞の抑揚が、皆、同じように聞こえるため中盤がやや単調でダレる。
映像は綺麗だ。鑑賞した映画館が最近、デジタル上映を採用し、色彩、フォーカスともにクリアになって、今作では霧や雨の一粒一粒が見えるようでソンフィールド館の佇まいや森が美しく、とても楽しめた。