「ザ・フライ」へんげ kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ザ・フライ
外科医でありながら病気のため引退し、後輩・坂下(信國)の持ってきてくれる翻訳のバイトで食いつないでいる状態の門田吉明(相澤)と、その彼を支える妻・恵子(森田)。3日に一度くらいで起こっていた発作も頻度を増し、手がハエ男のように変貌を遂げ、発作が治まると普通に戻るようになった。恐怖におののく妻であったが、坂下にもらった鎮静剤で急場をしのぎ、かわらぬ愛を貫いていた・・・
一旦は入院させた恵子であったが、その頃、連続通り魔事件が世間を賑わせており、彼が犯人なのではと疑う恵子。そして病院を抜け出し家へと帰ってきた吉明の身体がメスで切り刻まれてれるのを見ると、ますます愛おしくなってゆく恵子。冒頭でもテロップに“夫婦の愛の物語”と書かれていたし、完全な愛の物語なのだ(ほんとかな?)。そうした変身を遂げても愛を貫く物語といえば、『ザ・フライ』がある。
その『ザ・フライ』と似たような展開(とはいえ、原因についてはさっぱり語られず)からどのようなオチに持っていくのかと思っていると、“彼”の餌を妻が準備するというものだった。ちなみに、通り魔殺人は吉明の犯行だろうけど、人肉を食ったと思わせる描写はない。突然、病院を抜け出したと気づいた坂下が門田家にやってきて、吉明に食わせる。出会い系サイトで知り合った男を家に呼び入れ、吉明に食わせる。妙なタレこみがあったと刑事がやってきて、彼らを食わせる。とうとう、警察に追われることになった二人・・・
発作も頻度が増すと、わけのわからない古代語を口走るようになったが、それが破壊神であるかのような内容だったのだ。警官隊に撃たれて瀕死状態となっても、生きていて、徐々に巨大化してゆくのだ。自衛隊も登場、そしてさらに巨大化(100メートルくらい?)してビル群を破壊してゆく・・・という終わり方だった。
何が凄いかというと、低予算自主製作映画であるということ!さすがに徐々に虫になってゆく描写はないが、気色悪い効果音でその過程を表現している。そして、これが54分という長編とは言えない尺。咆哮についても武器になっているし、造形の不気味さも安っぽさを忘れてしまうくらいだ。