「「時かけ」から劣化し続ける・・・・・・」おおかみこどもの雨と雪 tokyonightkeepersさんの映画レビュー(感想・評価)
「時かけ」から劣化し続ける・・・・・・
細田監督作品は「時をかける少女」で好きになりましたが、「サマーウォーズ」を見て自分の評価がガクッと下がり、今回もまた下がりました。以下、その理由として4点挙げられます。
①冒頭で「母についての物語です」と断っているのに後半は息子と娘の話になってしまっている。話が一貫していない。おそらく子供も見ることを鑑みて子供達の話を入れたのだろうが、かえって話が散漫になった。冗長にも感じ、一緒に見ていた母も「まだ終わらないの?」とぼやいていた。
②「田舎の大自然の美しい風景」の描写がしつこい。「大自然の素晴らしさ」をテーマとして物語に組み込まないかわりに映像でアピールしようというのだろうが、かえってくどいと感じた。「『この美しい大自然を知ってもらいたい、大切にしてもらいたいんです』という気持ちは、もう十分伝わったからから勘弁してくれ」と言いたくなった。
③「おおかみこども」が全然関係無い。ファンタジーなモチーフな割に、物語を駆動させる装置以上の役割がない。これが例えばラピュタなら、シータの台詞『なぜラピュタが滅びたか、今分かったわ。(以下略)』にテーマが集約されるようにモチーフとテーマがしっかりと絡み合うが、本作には何の意味もない。
④確かに田舎の地域社会の人間関係には本作で描かれるような良い面もある。だが、排他の原理も強い。最近、田舎の村で村人のいじめから大量殺人が起きたが、こういう負の側面に対して監督は無頓着なのだろうか。
サマーウォーズもモチーフ(血縁関係のコミュニティ)に対して良い面しか語っていないが、相変わらずこの人はテーマに対して良い面しか語らない。
細田監督はポスト宮崎監督と言われていますが、自分は決してそうは感じません。
宮崎監督はテーマに対しても公平でストレートなメッセージをぶつけてきます。そして、そこに嫌みな感じがないです。
ですが、個人的な感覚で申し訳ないですが、細田監督の場合は何か嫌みな感じがするんです。主張がうるさい割にテーマに対して公平な態度ではない・・・・・・、そういう風に感じられます。