「クリストフ ・ワルツがいい感じと聞いて。」おとなのけんか ウシダトモユキさんの映画レビュー(感想・評価)
クリストフ ・ワルツがいい感じと聞いて。
ジャンゴのシュルツ医師役がとてもよかったので観てみたら、まぁーいい感じだった。ジョディフォスターのああいう母親いるよね感もいいし、マグノリアで拳銃なくしたおまわりさんの人の、いい人キャラからの開き直り具合も素敵。ケイトウィンスレットは歳とったけどキレイでいいし、その口から盛大なリバースっぷりも良かった。もともと舞台劇なんだそうで、これは役者を楽しむための映画なんだと思う。そういう角度では満足度高い映画だった。
お話としては二つ気になることがあって、まず『ケイトウィンスレットのリバース場面が15分早い』という点。
これは前半のタテマエでの話し合いと後半の本音のぶつけ合いが、リバース場面で切り替わっているんだけれども、その割合がちょうど半々くらいなので後半飽きちゃうんだと思う。タテマエの応酬の中で本音や考え方のギャップが時々漏れ出しちゃうところがスリリングだし、ケータイ通話で中断中の気まずさなんかで緊張感を蓄積することで開き直った時のカタルシスがあると思うんだけれど、その山場が早めに来ちゃってる気がする。
そして後半、グダグダになってきたお話にどう決着つけるのかを見届けるのが目的となるわけなんだけども、それを丸ごとエンドクレジットに投げるのは少し肩透かし感があると思う。ここまで密室劇に付き合ってきたのだから、やっぱりあのマンションの室内でのオチがあった方がグッと締まると思う。
例えば。歯を折られた方の息子が折った方の息子と和解して、むしろ喧嘩を機に意気投合して自宅に連れて来るという体(てい)で、「ただいまー、友達連れて来たよ。あと家の外にハムスター逃げ出してたから捕まえてきたよ。」なんて言いながらリビングに来ると、グッタリした双方の両親と対面して、子供達と親達がお互い「えっ?」「えっ?」ってなる場面をラストに持ってくるとか。仲直りできた子供達と決裂しかできなかった大人達をひとつのカットに収めることで、滑稽な対比がより明確になったんじゃないかなって思った。