「話や演技は良いのだが、映像的に変化が無くて面白みに欠ける作品だ!」おとなのけんか Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
話や演技は良いのだが、映像的に変化が無くて面白みに欠ける作品だ!
子供の喧嘩には、大人はお呼びでは有りませんよね!!!この法則は多分全世界共通の決まり事だと思いませんか?
子供同志の喧嘩だった筈なのに、子供不在でその両親同志が喧嘩のその後始末を総てまとめてしまおうと思えば、そこには不自然な結果を生む事態になる事は火を観るより明らかな事だ。
当事者では無いので当然見えない問題が出て来るのだから、そう言うシュチエーションは多数の人達が経験した事が有るだろう題材なので、戯曲としては大変に興味深く、コメディーとしても大変面白い筈だ!
それは解るのだが、しかしこれは映画としては、どうなのだろうか?と言う疑問で頭が私は一杯になったのだ!
2組の両親を演じる4人の俳優達はみなそれぞれに演技派で、芝居が巧いのは保証付きだが、
それでも、この映画は殆んど、セリフのヤリトリの妙を楽しむための話なものだから、テーマとしては面白くても、映画としては面白味の薄れてしまう題材だと私は思うのだ。
例えば、黒澤監督の「羅生門」の様に、1つの話でも何度も回想シーンを別の角度からそれぞれの人物の言い分を回想と言う手法を使って映像的には違って見える様に、描いて行くのなら話は別である。
しかし、この映画は初めのシーンは書斎、次にリビングルーム、トイレとキッチンが少し出てきて、玄関の外のエレベーターホールのシーンが少しだけと、シーン変わりは何度となく繰り返されると言っても、全部が密室劇で有り、その密室の中で起こっている事自体が、事件の謎解きでは無いので、密室で終始する必要性を感じないのだ!そこには閉塞感だけが、息苦しく記憶に残ってしまう作品だった。
それが、オトナ達の無意味な喧嘩の正体なのだから、ネライ通りとポランスキーならではの言い分なのだろうか?・・・
大人同志の喧嘩の話でも、「別離」は今年最高に気に入った面白い作品だったのだが、「別離」に於いては、喧嘩の行く末を実際に映像で描いて行くのだ。
これこそが映画だと思う。舞台で観るのなら、シーン変わりも2~3回程度で、板つき芝居なら言葉の面白さを存分に楽しみ、役者の演技力と迫力をライブで体験すると言う、お客さんと演じる側が、同一空間を過ごすと言う醍醐味があるから面白いのだが、この映画は決してライブの臨場感を超える迫力を出す事には至っていない。映像として見せると言う楽しみを盛り込めない点が、この話の難しさなのだ。
好きな監督と、素晴らしい俳優陣ではあるけれど、私は、この映画には高得点は出せなかった。あくまでも私の好き嫌いと言う好みの問題だけなのだが、ゴメンナサイ