「救いはないが絶望もしない」グスコーブドリの伝記 もふもふさんの映画レビュー(感想・評価)
救いはないが絶望もしない
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原作があまり好きではなかったのですが、銀河鉄道の夜が良かった記憶があるのでとても楽しみにして劇場へ行きました。
原作より、映画版のほうがずっと素敵でした!深みのある美しい映像、幸せなときも、不幸なときも、生々しすぎない可愛い猫のアニメ、楽しいような悲しいような音楽、どれも良かったです。
なんと言っても、主役は大自然です。
ただの背景ではありません。絵に描くことにより、写真よりも質感と量感を備えた存在感を持っています。過酷な運命にさらされているときでさえ、目を奪われるほど美しい。背景美術のすばらしさを劇場で堪能しないなんてもったいないです。
あちこち改変があったけど、そこがまたよかった。
原作では妹のネリと再会しますが、今作では夢の中ですら直接会うことはできません。原作でブドリが肥料を降らせるエピソードもありますが、ごっそり削られています。てぐす工場でのシーンは餓死しかけたブドリの見た夢の中のエピソードになっていて、無数の蛾が空へ飛び立つシーンは飢饉で死んでゆく無数の人々を表しているようです。それをなすすべもなく見つめる子どものブドリ・・・。
ストーリーはブドリに厳しくなりましたが、ブドリは絶望することなくまっすぐに育ち、たくさんの出会いに感謝しながら自分に出来ることを模索します。
何があっても生きようとする力、生命の持つ底力のようなものをブドリの生き方から感じました。見てよかったです。
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