劇場公開日 2012年7月14日

「青春のやるせなさ」苦役列車 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5青春のやるせなさ

2012年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 山本未来さんが気持ち悪い男を熱演していて、本当に変な顔や姿勢やしゃべり方を徹底していた。また舞台が80年代の後半という人類が史上最もダサかった時代で、『タイムマシンはドラム式』のように美化することが一切なく、徹底してダサくシャツをスリムジーンズにインしていて見事だった。

 原作の西村賢太さんはこの映画をとても気にいらなかったそうなのだが、どこが嫌なのか気にして見ていた。とはいえ、オレは原作を読んでいないのでなんともいえないけど、すごくいい映画だった。青春のやるせなさや儚い友情が描かれていてとても胸にしみました。原作も読んでみたくなりました。

 また、ヤリマンの女とその彼氏と動物ごっこする場面はスクリーン全体が発狂していて爆笑した。

 マキタスポーツさんの人足役も素晴らしかった。高良健吾さんのメンズノンノの出ていそうな古いタイプのイケメンぶりもすごかった。前田敦子ちゃんもとてもかわいらしく自然で、映画に溶け込んでいた。

 ただ、かっこいい山本未来さんや前田敦子ちゃんを目当てに見に行くお客さんは相当がっかりするんじゃないでしょうか。そんな意味でも攻めています。

 贅沢を言えば80年代の景色の引いた絵が見たかったし、山本さんも素晴らしいけど本物の不細工役者、例えば『おんなの河童』の梅沢くんなどが主演したものも見てみたい。

吉泉知彦