劇場公開日 2012年7月14日

「あえて言おう、クズであると!」苦役列車 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あえて言おう、クズであると!

2013年1月21日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

知的

日雇い労働の青年・北町貫多は、父は性犯罪者で中卒、学ナシ金ナシ友ナシ女ナシ、あるのはひがみとコンプレックスと愚痴だけ。稼いだ金は酒と風俗に消える。そんな貫多に、初めて友と言える存在と気になる女の子が出来…?

最近クイズ番組でよく見かける西村賢太の芥川賞受賞作を、「天然コケッコー」「マイ・バック・ページ」の山下敦弘監督が映画化。
共感と不快感が絶妙にマッチした、不思議な魅力の青春ドラマに仕上がった。

主人公の貫多は、あえて言おう、ろくでなしであると(笑)
その徹底したダメダメっぷりは逆に天晴れ。
友達=自分にとって都合のイイ人、女=ヤらせてくれる人、物事全てにおいて卑屈な考え。夢も無く、薄汚い底無し生活を自堕落に生き、自分の愚かな行いでせっかくの友達も失う。
本当にダメダメのろくでなし、いや、もっと言うと、クズ。
だけど、何故か嫌いになれない。
自分の中にもクズな一面はあるし、世の中案外こういう人間いるんじゃないかな? 最も、ここまで酷くはないが(笑)
1980年代の若者ながら、自分の方向性を見出せずネガティブで人との付き合いも下手、その姿は現代の若者にも通じる。
堕ちる所まで堕ちても、それでも“唯一”と言えるものがあった。それは、本。本を没頭して読んでいる時だけは、ひたすら純粋だ。そして自分も何か書き始める。
クズはクズなりに不器用に生きている。
押し付けがましくメッセージを訴える映画なんかより、背中を軽く一押ししてくれるようなエールが身に染み入った。

貫多を演じる森山未來が素晴らしいまでに巧い!キネマ旬報主演男優賞おめでとう!
貫多とは対称的な好青年・正二役の高良健吾の受け身の演技も絶品、ウザい同僚役マキタスポーツも印象的。
そして、前田あっちゃん。映画オリジナルのヒロインで、賛否両論だが、良かったと思う。手を舐められたり、下着姿で冬の海を泳いだり、見事な頭突きを食らわせたり、今回のようにイイ作品と役に恵まれれば女優として開花しそう?

近大