「これから犬を飼う家庭、特に子供に見て欲しい作品」ひまわりと子犬の7日間 覆面A子さんの映画レビュー(感想・評価)
これから犬を飼う家庭、特に子供に見て欲しい作品
映画は、宮崎県中央動物保護管理所に収容された母子犬をめぐる実話を記録した、山下由美さんの書籍『奇跡の母子犬』がベースになっています。
人間不信で狂暴化した母犬「ひまわり」に心を開いてもらうべく、懸命に奮闘する保健所の職員さんのお話です。
多分、実際に犬を飼っていて犬が大好きな人はこの映画を見ていると辛くなると思います。
タイトルは7日間とありますが、その7日間というのは「犬が管理所で与えられる命の期限」のことで、実際はひまわりへは特別に21日もの猶予が与えられます。
でも、その裏で、全国で「7日間」できっちりと殺処分に回されていく犬たちがいる…
隣の檻に入っている犬たちの「未来」が公平であるかを考えると、
むしろ周囲の犬の方が可哀想に感じられてきて、とめどもなく辛い思いで観ていました。
(映画の中の犬たちはアクター犬だとわかっていても)
「その動物がどんな風に生きてきたか、どんな歴史があり、
どんな物語を作り上げてきたかを想像すれば、心は必ず通じ合える。」
作品を通じて主人公が語る言葉は、この作品の核だと思いますが
他のワンコたちにも、みな、ひまわりと同様の「歴史」があり「心」があることも
どうしても考えさせられてしまいました。
だからこそ、これから動物を飼おうと思う人、
特にお子さんには絶対見て欲しいと私は思います。
「動物の死を見送ること」=「動物が生きてきた歴史をすべて引き受けること」
そのことにどれほどの責任感を必要とし、途中放棄することはどれだけ罪深いことか、この映画はきちんと綴ってくれていると思うので。
ただ、映画的には、多少演出が過剰だった思いは否めません。
個人的には、原案の方の文章の方が、客観的で鋭くリアルで精緻な分、よほど心を打ちます。
そして何より、原案者の方は今現在をも「犬に残されている猶予」と戦われているのが痛いほど伝わってくるので、受け取り手も何かしたい、何かせねば…という衝動に駆らせてくれます。
故に映画としても、これでもかとばかりの演出はもう少し抑え目に、
もう少し淡々と描いて欲しかった思いはあります。
特に「はい、ここです。ここで泣いて下さい」とばかりのBGMの鳴り響きは
少し逆効果にも思えてしまい、多少残念に感じました。
最後に私ごとですが昨秋、19歳の猫を見送りました。
彼女が逝くほんの数日前のこと、看病でうとうとしている私の顔に彼女がにゅっと手を伸ばし、わずかに爪を出して私を起こした時の、彼女の慈愛に満ちた表情を私は未だに忘れません。
ほんの一瞬のことでしたが、彼女の穏やかな眼差しに「私達の19年間」がありました。
昨年末から今年にかけて(そして今も)ペットロスで苦しんだ私ではありますが、今年、気持ちに整理がついたら犬を飼いたいと思っていたので、この映画は良いきっかけづくりとなってくれました。
まさに犬を飼わんとしている我が娘に、絶対見せたい作品です。