ノア 約束の舟のレビュー・感想・評価
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テーマはノアの選択
この映画、ノアの預言どーり大洪水が起き、箱舟にのってパニックを乗り越える超大作だと思っていた。
確かにそんなお祭り要素もあるにはあったが、この映画の軸はエモーショナルなヒューマンドラマであった。
監督のダーレンアロノフスキーは「ブラックスワン」や「レスラー」等で人間のダークサイドを描いてきましたが、それは本作でも全開。
映像の方も相変わらず重厚な色合いで、本作では可能な限りロケを敢行したのか、よりアートな映像を作ることに成功している。
物語は主人公ノアが1人の人間として、はたまた神の意志を正統的に受け継ぐ立場として究極の選択をせまられ、苦悩する物語。
ノアを演じたラッセルクロウをはじめとして、ジェニファーコネリー、エマワトソンらのエモーショナルな演技はとにかく素晴らしいの一言。
ラッセルクロウにいたっては、あんたどんだけ「鬼」なんだよと、そのありさまは恐るべしでした。
ゆえに感情移入は容易にでき、彼ら演じるヒューマンドラマは最後まで飽きずに観れ、後半では涙を流したのは言うまでもない。
本作では予告編で観れるような金のかかったCGも多用されているが、それらは全てドラマを盛り立てる脇役にすぎない。(あっ、ただし動物大集合的なシーンはちと笑ってしまったが...)
個人的に見事だなと思ったのはやはりラストの手前のノアが究極の選択にいよいよ白黒付けるシーンである。ノアがその選択に答えを決めるまでの「タメ」と「タイミング」は映画史に残る名シーンになったのではなかろーか。
この時ふと思ったのが、もしもノアが逆の選択をしていたらどんなに悲惨な物語になっていただろうか、考えるだけでも恐ろしい、でもちと見てみたい気もしたりしました。
結果、この人間としての選択には個人的にしっくりいったし、若干宗教臭くなりそうな雰囲気もそんなに鼻をつく事はなく、おとぎ話としてもヒューマンドラマとしても単純に楽しめた一本でした。
ところでサブタイトルの「約束の舟」って何だ?
あっ、今日はプロレスリングノアの三沢光晴さんの命日でもあった。
関係ないけどノア繋がりでご冥福を。
これはアクション娯楽映画です
コーランはムハメドが、610年に神の啓示を受けて、632年に没するまでの22年間に、神アラーから受けた啓示を編纂したものだ。ムハメドは預言者であり、預言者とは神の言葉を預かった者を指す。キリスト教ではイエスを「神の子」として信仰の対象にしているのに対して、イスラム教ではムハメドは人間であり、信仰の対象にはならない。信仰するのは、唯一絶対神のアラーだけだ。
一般にイスラム教は7世紀に始まったと言われる事が多いが、コーランによれば、この世が創られた時から根源的に神は存在していた、とされる。神はそれぞれの共同体に預言者をつかわせて正しい信仰と、正しい行いの規範を伝えさせた。アダム、ノア、アブラハム、モーゼ、イエスなどが、重要な預言者であり、ムハメドは、「最後の最も優れた預言者」である、とされている。
アダムやモーゼは旧約聖書の登場するが、コーランにもその名前が預言者として記載されていることに、意外な気がする。したがって、旧約聖書は、キリスト教にとっても、ユダヤ教にとっても、イスラム教にとっても、重要な人類の創世記について述べた宗教書ということになる。
キリスト教、ユダヤ教、そしてイスラム教にとって、共通して世界は「はじめは何もなかった。」のであって、神が天と地を創造した。旧約聖書は、イエス以前の神による天地創造の壮大な物語だ。
神はアダムとイブを創り、イブは蛇にそそのかされて禁断の果実を食べてアダムと共にエデンの園から追われる。アダムとイブは、カインとアベル、二人の男の子を持ったが、カインは嫉妬ゆえに弟アベルを殺し、エデンの東に留め置かれる。人々は邪悪に慣れ、高慢がはびこり、神は自分が創造した肉体をもつものすべてを皆滅ぼすことにした。しかし、預言者ノアだけは、過ちを冒すことなく正しく生きていたので生存することを許される。神の言われるまま、ノアは妻と3人の息子とともに方舟を作り、罪のない動物たちを方舟に乗せる。40日、40夜雨が降り、ノアとともに方舟に乗っていたもの以外の生き物は皆死に絶える。ノアは7か月と2週間のちに、陸に立ち神の祝福を受ける。 これが「ノアの方舟」の物語だ。
この「ノアの方舟」が映画化された。全米では上映開始後、記録的な入場動員数を上げて、すべり出しは好調。オーストラリアでも主演が、オージーの中のオージ―代表選手、ラッセル クロウだから、3Dの大型映画館は、大人気で込み合っている。
しかしイスラム教徒が多数を占める、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、エジプト、ヨルダン、クエートなどでは、この映画の上映が禁止された。イスラム教では、神を偶像化することが禁じられている。アダムやノアやモーゼやイエスや「最後の最も優れた預言者ムハメド」を、役者が演じることも許されない。映画化は神や預言者を侮辱することになる、という。
宗教は、もとが同じでも、伝わり方によって、ことほどさように厄介だ。
ノアの方舟ときいて、動物がたくさん出てきて方舟に乗るところをとても期待して観に行った。大地を揺るがしてドカドカと、象やキリンやゴリラが方舟に向かってくるシーンは、大スペクタクルで迫力いっぱいで、単純に見ていて嬉しい。フィルムだからこそすばらしく勇壮な映像で、観客に強いインパクトを与えることができる。
エマ ワトソンが、部族の襲撃にあって生き残った少女がノアに救出され養女として育てられ、やがて長男と結婚して双子を生む、大事な役を演じている。ハリーポッターでは、顎のしゃくれた気の強い魔法使いだったが、すっかり大人になって可愛らしい。しかし、11歳でハリーポッターの映画の撮影が始まった3人の子役たち、ダニエル ラドリフ、ルパード グリント、エマ ワトソンの3人が、3人とも20歳になっても背が伸びなかったのは残念だ。
ウォッチャーズという岩の「おばけ」がたくさん出てくる。神の怒りに触れて岩にされて地上に降ろされた生き物だが、彼らが体を張ってノアたちを、方舟を乗っ取ろうとする邪悪な人間たちから救ってくれる。おかげでノアたち家族は全員そろって方舟に乗り遅れずに済むわけだけれど、ウォッチャーズがガンガン敵をぶっとばしたり、人間の束をわし掴みしてブン投げたりするシーンは、「ワールドワーZ」のゾンビと米軍戦闘シーンか、「指輪物語」の怪獣との乱闘シーンを見ているようだ。戦うだけ戦って、ボロボロになったウォッチャーズが次々と、神に許されてバキューン ドキューンと、天に召されていくところなど、ほとんど漫画のようだ。
CGを使って壮大なスケールで、預言者ノアのパワーを見せようとすればするほど、ノアがただの石頭の「頑固親爺」に見えてくる。なんといってもラッセル クロウだからかしら。ウェリントン生まれのオ―ジー俳優、50歳。男っぽさと喧嘩早いことで有名。「グラデイエイター」(2000年)撮影中、プロデユーサーブランコ ラステイングと喧嘩になって素手で殺しかけたけれど、結果としてアカデミー主演男優賞を受賞し、「ビューテイフルマインド」(2001年)でゴールデングローブ賞をとり、受賞スピーチの報道に文句をつけて番組プロデユーサーを壁に叩きつけ、「シンデレラマン」(2005年)では、NYホテルからシドニーの家に電話がかからないことに腹をたてボーイに電話をたたきつけ怪我をさせ、暴行容疑で逮捕された。そんなの彼には日常茶飯事。
ロックバンド「30 ODD FOOT OF GRUNTS」のリードボーカルでギタリスト。ナショナルラグビーリーグ「ラビトーズ」のオーナーだ。
国民全体が間違いなくラグビー狂のオーストラリアで、プロのラグビーチームを所有するということが、どんなに英雄的なことか、、、彼をして男の中の男と、いわせる所以なのだ。選手15人を食べさせていけばよいというわけではない。試合に出場する強豪選手を支える2軍、3軍の選手たちをかかえ、地元シドニー南部のサポーターたちや、熱狂的なファンの会や、チアガールのグループを持ち、リーグ戦に勝ちぬかなければならない。体重100キロのバッファローのような男たちが100メートルを10秒で走り激突する。ラグビーは格闘技そのものだ。今季も彼の「ラビトーズ」は、「シドニールースターズ」や、「バンクスタウン ブルドッグス」や、「マンリーシ―イーグルズ」など強豪チームを相手に良い試合をしている。
また役者のなかにはパパラッチを嫌って、私生活を守るために逃げ隠れする俳優が多いが、ラッセル クロウは表裏なし、公私の隔てなし、どこからでも取材も写真も自由で、パパラッチはマイト扱いだ。ロックで、フットボール狂で、喧嘩の早い乱暴者だけど、これがオージー男の代表です。はい、、、。もんくありません。なのだ。
そんな男を主役にすえた聖書物語。本物のクリスチャンは、見ない方がいいかもしれない。
パラマウントが1億2500万ドルの巨費を投じて製作したスペクタクル超大型作品「ノア」。
よもや聖書のお話、と思わないで、ハリウッドアクション超大作娯楽映画というつもりで観に行くことをお勧めする。
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