「『血塗られた歴史』ってヤツです」リンカーン 秘密の書 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
『血塗られた歴史』ってヤツです
確か『ファイトクラブ』のサイコな男前タイラー・ダーデンが、
「歴史上の偉人と闘うなら誰がいい?」という質問に「リンカーン」と答えていた。
実際の話、若い頃のリンカーン大統領はかなり喧嘩が強かったとかいう噂。
そうでなくてもああいう体型の人は基本腕っぷしが強いという説も聞いた憶えがある。
そのリンカーン氏が実は吸血鬼ハンターだった!というトンデモ設定のアクション大作が、本作。
オカルト好きな自分としてはまず吸血鬼の設定が独特で面白い。
・日焼けクリームとサングラスで日光から身を防いでおり、弱点は銀のみ
・透明になって相手を攻撃できる
・カンフーが得意
といった点が、他の吸血鬼とはひと味違う所。
彼らは人間世界に紛れ込んで堂々と生活を送っており、
豊かな(=人間の血がたっぷり吸える)生活を得る為に合衆国を裏で操ろうと画策している。
で、吸血鬼ハンター兼大統領のリンカーン氏が立ち向かうというワケ。
(先住民や奴隷への迫害を全て吸血鬼のせいにした設定はヒジョーに気に入らないのだが、
エンタメ映画という括りなのでツッコまない事にする)
まず、流麗な格闘をスローでみせるアクションがかなりの迫力!
斧をバトンの如くグルグル回転させながら敵に一撃を叩き込む様がカッケー。
列車上で斧を2人で持ち替えながらの華麗な立ち回りは、さながら舞踏のようだ。
ひとつひとつのアクションシーンは短めだが、
随所に挟み込まれるのでボリューム不足はあまり感じなかった。
予想以上に史実をキチンと踏まえた展開も面白い。
若い頃の話だけかと思いきや、クライマックスはヒゲの立派な大統領になってからだもんね。
史実での暗殺直前、師匠のリクエストを断るシーンは、作り話とはいえ少し切ない。
ただ、馬の大群の中で闘うシーンは、場面展開のあまりの唐突さに笑ってしまった。
(馬もいきなり異常繁殖してるし)
あと、吸血鬼ハンターの組織がある事を匂わせていた割には
“同業者”が登場しないのも、物語としては寂しいよね。
各キャラ描写も薄めで、壮大な設定の割には世界観にあまり拡がりが無いように感じられた。
それとリンカーンが猛烈に強いのは修行の成果であって欲しかったなあ。
しかしベクマンベトフ監督、
ロシアで実績ある監督なのにこんなバリバリのアメリカ映画を撮るとは。
カザフ出身とはいえ……向こうの大統領さんは不機嫌になってないすよね?
<2012/11/9鑑賞>